アートが結ぶ個と社会—障がい者アート協会が挑む新しい支援の形

一般社団法人障がい者アート協会

一般社団法人障がい者アート協会は、障がいを持つ方々の創作活動を支援し、社会との新たな繋がりを生み出しています。オンラインギャラリー「アートの輪」を通じ、47都道府県から集まる約6万点の作品を広く発信。企業との提携により、著作権使用料や経済的支援を提供し、創作を続ける全てのアーティストを支援しています。

また、文化庁登録の著作権等管理事業者として、透明性の高い運営を実現。設立の背景には代表者自身の家族の経験があり、社会に参加する喜びを届けたいという熱い想いが込められています。取り組みの詳細や課題、未来への展望について、代表の熊本さんにお話を伺いました。

全国47都道府県から集まるアート作品

ーまず、事業の概要について教えてください。

一般社団法人障がい者アート協会代表 熊本さん(以下敬称略):一般社団法人障がい者アート協会の事業は、障がいを持つ方々が行っている創作活動を支援するものです。具体的には、オンラインギャラリー「アートの輪」を運営していて、今では全国47都道府県から1600人以上が登録してくださっています。作品数も約6万点とかなりの規模になってきました。

このギャラリーを通じて、アーティストの作品を広く見てもらう機会を提供しているんです。ですが、それだけではなくて、企業さんが作品を商品パッケージや広告デザインに活用する仕組みも作っています。この場合、企業さんからアート使用料をいただき、その中から文化庁に登録している使用料規程に基づく著作権使用料をアーティストに還元する形です。一部は運営費として使わせていただいています。

さらに、事業収益の一部を「創作活動応援費」としてプールして、3ヶ月ごとにその期間で作品を発信された全ての登録アーティストへ均等分配しています。こうすることで、たとえ作品が採用されなかった方でも、創作活動を続けるための経済的な支援を受け取れるようになっています。

もっと多くの人に自信や喜びを感じてほしい

ーこの事業を始めるきっかけを教えてください。

熊本さん:きっかけは家族の経験からなんです。私の息子が軽度の知的障がいを持っているのですが、絵を描くのが得意で。埼玉で参加していたあるサークルで描いた絵が、商品のパッケージに採用されたことがあったんですよ。そのとき、息子が自分の力で稼いだお金で好きなものを買ったりする姿を見て、すごく誇らしかったんです。

たとえば、普段ちょっと手を出せないような高いアイスを買ってきたりしてね。それを嬉しそうに食べる姿を見て、「あぁ、これって本当にいいな」と心から思ったんです。

でも、ふと周りを見たときに、そういう機会をもっと多くの人に提供できたらいいなって思ったんです。個人の体験だけで終わらせるのではなくて、事業として展開すれば、もっと多くの人に自信や喜びを感じてもらえるんじゃないかって。そう考えて、50歳のときに一念発起して起業したというわけです。

より多くの方に支援を届けたい

ー事業を運営する上で意識していることはありますか?

熊本さん:一番意識しているのは「数を追う」ということです。具体的には、作品の数、登録者数、取引企業の数などですね。これらを増やしていくことで、より多くの方に支援が行き渡るようになると考えています。

あとは、非営利団体としての運営なので、どうやって限られた資金で効率よく運営するかを常に考えています。特に、支援を受ける側だけじゃなくて、支援を提供する企業の裾野をどう広げるかっていうのが大きな課題ですね。

創作を続けたい人を全力で支える

ー他の団体にはない特徴やアピールポイントを教えてください。

熊本さん:そうですね、よく聞かれるんですけど、障がい者アート協会の特徴はやはり「裾野を広げること」にあります。他の団体さんは、特にアート性が高い作品やアーティストにフォーカスすることが多いんですが、私たちはもっと多くの人に光を当てたいと思っているんです。

たとえば、すごく才能があるアーティストだけを支援するんじゃなくて、絵の上手い下手に関係なく、創作を続けたい人を全力で支える。それが私たちのポリシーです。あと、文化庁に登録された国内唯一の著作権等管理事業者であることも強みですね。これによって、著作権使用料を透明に管理して還元できる仕組みを実現しています。

今後は企業側に知ってもらうアプローチを

ー今後の課題や展望について教えてください。

熊本さん:課題としては、支援を提供する企業側の裾野をどう広げるかですね。正直、当初は「作品が増えれば自然と企業も増えるだろう」って思っていたんですが、現実はそう簡単じゃなかったんです。

企業側がこの仕組みをもっと知って、「やってみよう」と思ってくれるようなアプローチが必要だと感じています。具体的には、企業の社会貢献活動やマーケティングの一環として、この仕組みを活用してもらえるような提案を増やしたいです。例えば、イベントや直接的な広報活動で、もっと目に留まるような工夫をしていく予定です。

企業リピート率は驚きの80%!

ー最後に、事業に参加を検討している方々へのメッセージをお願いします。

熊本さん:まずアーティストの方々には、とにかく「気軽に参加してください」とお伝えしたいですね。絵の上手い下手は全然関係ありませんし、ネットから簡単にエントリーできるので、興味があればぜひ一歩踏み出してほしいです。

企業の皆さんには、これまで参加してくださった企業さんから「やってよかった」という声をたくさんいただいています。リピート率も80%を超えているので、自信を持っておすすめできます。この仕組みを活用して、新たな価値を一緒に創造していただければ嬉しいです。