理学療法士として医療現場で培った経験を活かし、障害者の「働きたい」という思いに寄り添う就労継続支援B型事業所を運営。
一般的な清掃作業だけでなく、プロフェッショナルなハウスクリーニングや個性を活かしたイラスト制作など、利用者一人ひとりの可能性を開花させる取り組みを行っています。
元々理学療法士として病院に勤務していた事業責任者の尾森亮太氏に事業所の強みや展望についてお話を伺いました。
医療現場での経験から見えた「働く」という課題
ーこのサービスを提供するに至った背景やきっかけについて教えて下さい。
尾森氏:理学療法士として勤務していた際に、若くして脳梗塞や難病を患った方々のリハビリを担当する中で「働きたい」という願いに応えられず、またそのためのインフラがない、知らないということに気づきました。
病院での4年間、その後の在宅医療での7年間で、多くの若い患者さんと関わってきました。
その中で日常生活はある程度自立できても、就労という面での受け皿がないことを知りました。
一緒に就職活動をしても、なかなか上手くいかないケースが多く、『一緒に働いた方が早いんじゃないか』と考え、B型事業所を立ち上げることにしました。
業界のトンマナを知らないからこそやれた普通の取り組み
ーどういった方を対象に、どのような支援や作業内容を提供されていますか。
尾森氏:チャレンジラボでは知的障害、精神障害、身体障害など、疾患を限定せずに受け入れており、一般的な企業と同様の仕事体系の構築ができるように意識しております。
主力事業として展開しているのが、プロフェッショナルなハウスクリーニングサービスで、不動産会社や内装業者、廃品回収業者から直接依頼を受け、エアコンクリーニングなど専門的な清掃作業を行っています。
B型事業所の平均工賃が月1万6000円から7000円程度という現状を知り、それは請け負う作業の問題なのか、勤務時間の問題なのか、内職以外の外部作業は能力的に難しいのか。
そういった疑問を検証するため、自らハウスクリーニング技術を身につけ、スタッフ(利用者)に技術指導を行い、数多の作業ご依頼に応えていった結果、現場に出られるスタッフの平均は5万~7万、月の3/4程度外部作業に出られたスタッフは10万円を超える工賃を獲得できるようになりました。
ただ、あくまで工賃の底上げは実験結果に過ぎず、ラボを運営して感じるのはスタッフの好きなことや得意分野を「お金に換える」手伝いの必要性です。
利用者の個性と強みを活かしたビジネスモデル
ー当事業所の強みやアピールポイントを教えて下さい。
尾森氏:チャレンジラボの特徴は、医療的観点から「残存機能を活かして何ができるか」を見つけ、トレーニングを通じて新しいことができるようになる支援を心がけています。
例えば、イラストが得意な利用者が事業所の看板やホームページのイラスト、名刺の似顔絵を手掛けるなど、個性を仕事に結びつける取り組みを行っています。
「障害者の方々から収益を上げるのではなく、障害者の方々が収益を上げられるようにする」これが私たちの考え方です。
趣味や特技をビジネスに変換し、それぞれの強みを活かせる場所を作っています」
「出来ない」にとらわれない、挑戦を支える環境づくり
ー利用者の方と接する際にどんなことを意識されていますか。
尾森氏:「出来ない」「知らない」「分からない」という言葉は不問とし、まずはチャレンジする姿勢を大切にしています。
利用者の中には自分の欲求を素直に表現できる人もいれば、「障害者である自分」を受け入れすぎて本来の自分を見失っている人もいらっしゃいます。
そのため、本音で話せる関係性づくりを心がけながら、新しいことにも積極的に挑戦できる環境を整えたいと考えています。
失敗を恐れず、自分がやりたいと思うことに全力で取り組める経験が大切です。
私たちは、その挑戦に寄り添い、サポートしていく、それが私たちの役割だと考えています。
地域に根差した展開と今後の展望
ー今後の展望や取り組んでいきたいことについてお聞かせください。
尾森氏:今後は就職先の開拓に力を入れていきたいと考えています。
企業との関係性を築き、当事業所で働く利用者の勤怠の安定性や能力の高さを認めていただき、就職につながるような体制を作っていきたいです。
現在2店舗で展開するチャレンジラボですが、今後は地域に根差した形での展開を目指しています。
地域包括支援センター(ケアプラザ)と連携し、地域の課題解決に貢献することで、障害者施設の新しい可能性を切り開こうとしています。
最終的には、就労継続支援から一般就労への橋渡しができる事業所を目指しています。
そして、働くことを諦めなくて良い、そんなメッセージを伝えられる場所でありたいと思います。
ー最後に利用を検討されている方へメッセージをお願いします。
尾森氏:「本当にやりたいこと」の実現には伴走者が必要です。
私たちは、利用者一人ひとりの思いに寄り添い、それを形にするお手伝いをさせていただきます。
今の現状に納得できていない方、新しいことにチャレンジしたい方、ぜひその気持ちをぶつけていただければと思います。