誰もが参加できる国際協力へ―特定非営利活動法人コンフロントワールドが示す新しい可能性

毎日2-3時間かけて水汲みに行く子どもたち。トイレがなく、安全な排泄さえままならない女子児童たち。東アフリカ・ウガンダとタンザニアで、子どもたちの”当たり前”を守る活動に取り組む特定非営利活動法人コンフロントワールド。副業やボランティアとして参加する彼らが目指す、新しい形の国際協力に迫ります。

不条理の無い世界を目指して―アフリカの子どもたちへ水と教育を届ける

ーまずは特定非営利活動法人コンフロントワールドの活動内容について教えていただけますか?

荒井氏:私たち特定非営利活動法人コンフロントワールドは、「不条理の無い世界の実現」をビジョンに掲げ、生活と権利が保障され、誰もが自分で未来を決められる社会の実現を目指しています。主な活動地域は東アフリカのウガンダとタンザニアです。

ウガンダでは水と衛生の支援を行っています。水道のない地域に水タンクを設置したり、トイレのない場所にトイレを建設したりしています。また、水道インフラがない環境での手洗い習慣を広めるため、手洗い装置の設置なども進めています。

タンザニアでは教育支援を展開しており、小学校の建設や保育施設の経営改善に取り組んでいます。具体的には、施設の家計簿作成支援による黒字化や、学校菜園の設置による給食費用の削減などを行っています。

学生時代の経験から芽生えた使命

ー設立の経緯についてお聞かせください。

荒井氏:私は元々、金属工学を専攻する理系の学生でした。同級生の多くはパナソニックやトヨタ、製鉄会社などに就職していく中、私は大学3年生が終わった後に1年間休学し、ボランティアをしながら世界一周の旅に出ました。

その途中、ケニアでボランティア活動をしていた時、一人の子どもが亡くなるという出来事に遭遇しました。日本であれば防げたであろう、栄養失調や風邪が原因だったのです。その後も世界各地でボランティア活動を続ける中で、アフリカの劣悪な環境を目の当たりにし、「何かしなければ」という思いが強くなっていきました。そうした思いを周囲と共有する中で仲間が集まり、2018年2月に特定非営利活動法人コンフロントワールドを設立しました。

当初は別の代表者がいましたが、その方が体調を崩して離脱されたため、設立直後から私が代表を務めています。以来、ウガンダでは6年以上、タンザニアではコロナ禍前から約4年にわたって活動を続けています。

教育機会の確保と子どもたちの命を守る取り組み

ーウガンダでの水支援は、教育支援にもつながっているのでしょうか。

荒井氏:はい。ウガンダの子どもたちの多くは、水道のない家庭で暮らしています。毎日、片道2-3時間もかけて水汲みに行かなければならず、そのために学校に通える時間が失われています。

私たちは小学校に水タンクを設置することで、「学校に行けば水が手に入る」という環境を作ることができました。これにより、教育も受けられ、安全な水も確保できる―そんな仕組みを構築しています。実際に、学校によって20人から90人ほど通学できる子どもが増えたと現地の先生方から報告を受けています。

また、タンザニアでは体罰が残る教育現場の改善にも取り組んでいます。子どもたちの命が守られ、安心して学べる環境づくりを進めています。

活動による確かな変化

ー6年半の活動を通じて、現地にどのような変化が見られましたか?

荒井氏:確実に変化は表れています。まず、水タンクの設置により、多くの子どもたちが学校に通えるようになりました。また、トイレの建設は、特に女子児童の安全を守ることにつながっています。

以前は、トイレがないために外で用を足さざるを得ず、特に女子児童は危険にさらされていました。中には恥ずかしさから日が暮れるまで我慢する子もいました。しかし、トイレ設置後はそうした問題が解消されています。

さらに、水・衛生環境の改善により、病院を訪れる患児の数が減少したという報告も受けています。一つひとつは小さな変化かもしれませんが、確実に地域住民の生活の質は向上しています。

アフリカでの経験が教えてくれたこと

ー活動を通じて、ご自身の価値観はどのように変化しましたか?

荒井:大きく2つの変化がありました。1つは、日本という国の恵まれた環境への気づきです。水道水が飲める、トイレに鍵がかけられるといった、私たちが当たり前だと思っている日常が、実は偶然日本に生まれたから手に入れられた特権だったのだと実感しました。

2つ目は、生きることに対する考え方の変化です。アフリカで「生きたくても生きられない」現実を目の当たりにしたことで、自分の命の大切さを強く実感するようになりました。人生には限られた時間しかありません。その時間を大切に使い、社会に貢献していきたいという思いが芽生えました。

全員が”初心者”だからこそできる挑戦

ー今後の展望についてお聞かせください。

荒井氏:2つの方向性を考えています。1つは、現在の水・衛生・教育支援をさらに広げていくことです。活動を広げれば広げるほど、救える命は増えていくと考えています。地道な活動の継続が何より大切だと考えています。

2つ目は、「社会貢献の民主化」とも呼べる取り組みです。当団体は正社員を持たず、22名ほどのメンバー全員が副業やボランティアとして参加しています。私たちは皆、国際協力の専門家ではありません。しかし、そんな私たちでも確かな価値を生み出せることを実践で示してきました。

今後は、企業での本業以外の時間を使って社会貢献できる人をもっと増やしていきたいと考えています。ふるさと納税のように、お金だけでなく、自分の時間を社会課題の解決に向けることができる。そんな仕組みづくりを目指しています。

社会貢献への第一歩を踏み出すために

ー最後に、この記事を読んで活動に共感された方へメッセージをお願いできますか?

荒井氏:関心を持つことと行動を起こすことの間には、確かに大きな壁があります。しかし、まず関心を持っていただけることを、私たちは非常に嬉しく思っています。

特定非営利活動法人コンフロントワールドは、他の大規模な国際協力NPOとは異なり、全員が初心者から始めた組織です。私自身も国際協力を専門的に学んだわけではなく、ボランティア以外の現場経験もありませんでした。野球選手の大谷翔平も、最初はキャッチボールしかできなかったはずです。最初から何かができる必要はないのです。

現在、私たちはメンバーを募集しています。活動はオンラインが中心なので、東京以外にも、鹿児島や京都、さらには海外在住の方まで、世界中どこからでも参加可能です。写真撮影、広報、データ分析など、それぞれの得意分野を活かせる形で関われます。

何ができるかは決まっていません。それはある意味で難しさでもありますが、だからこそ、一人ひとりに合わせて少しずつできることを広げていけます。SNSでの情報発信や広報文の作成といった比較的取り組みやすいことから始めて、徐々に活動の幅を広げていくことも可能です。

関心を持って頂けたのなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。私たちは、あなたの「やってみたい」という思いを待っています。