代表の加藤大地さん27歳の時にカンボジアを訪れたことがきっかけで、カンボジアの農村部に初めての学校が誕生したのが2009年のこと。
竹建築による持続可能な村づくりプロジェクト「earth treeビレッジ」も誕生し、カンボジアの方々の文化を大切にしながら、教育支援から村全体の発展をサポートする活動を続けているのが「earth tree」です。
今回は代表の加藤大地さんに活動内容や今後の展望について、お話を伺いました。
カンボジアでの活動の始まり
ー カンボジアでの活動を始められたきっかけについて教えていただけますか?
加藤さん:27歳の時に、「世界一周を100万円でできる」という本に出会ったことがきっかけでした。
当時は周りの友人も会社で役職に就き始める年齢で、結婚し始める時期でしたが、自分らしい人生を歩みたいという思いがありました。
海外に行った経験がなかったので、まずはアジアの国、カンボジアを訪れることにしたんです。
10日間の旅でしたが、まず、その中で出会ったカンボジアの人々に魅了されました。
しかし、仲良くなった1人が夜中に急な病で亡くなるという出来事があり、素晴らしい人々が簡単に命を落としてしまう現実に衝撃を受けました。
翌年、カンボジアを再訪した際に学校建設をしている方と出会い、自分も好きになった国で学校を作り、生涯関わっていきたいと決意したのがきっかけです。
村の人々との信頼関係づくり
ー 現地の方々は日本人による活動をどのように受け入れてくれたのでしょうか?
加藤さん:カンボジアはポルポト時代に知識や技術を持つ人々が多く失われた特別な背景を持つ国です。
最初に会った村長さんに「この村に学校が必要ですか」と尋ねてみました。
村長さん自身、内戦時代に教育を受けられず、自分の子どもたちも勉強できなかった。
そして今、孫の世代が生まれてきているのに、いまだに勉強できる環境がない。
34年もの間、教育環境が整わなかった現実があったのです。
私たちの学校建設は、一般的な形式とは異なるアプローチを取りました。
通常の学校建設では企業からの資金を受けて仲介業者が現地の大工に依頼し、約3ヶ月で建設を完了させる形が一般的でした。
しかし、私たちは今でいうクラウドファンディングのような形で資金を集め、3ヶ月間現地に滞在しながら、大工さんや村の人々と一緒に学校を建設していきました。
最初は4人から始まった建設メンバーも、3ヶ月間で180人にまで増えていきました。
この期間中の密な交流を通じて、村の人々との強い信頼関係を築くことができたのです。
教育支援から持続可能な村づくりへ
ー 「earth tree」の活動内容について具体的に教えていただけますか?
加藤さん:「earth tree」としての活動はカンボジアでの学校建設から始まりました。
これまでに14校の学校を建設し、3月には15校目の着工が始まります。
しかし、最初の8年間の活動の中で、教育環境の整備だけでは今を守ることができないという課題に直面しました。
学校に通い始めた子供たちが病気になっても病院に行けない、怪我をしても適切な治療を受けられないという現実があります。
そこで、2018年からは村の人々の生活を支えるための仕事づくりにも取り組んでいます。
男性は竹建築、女性は籐を使ったアクセサリーやカゴ作りなど、現地の強みを活かした仕事をサポートし、現在28名が働いています。
作られた製品は、日本でのオンライン販売やマルシェでの直接販売、また年に1回のキャンピングカーによる日本全国での販売などを通じて、収入につなげています。
earth treeビレッジの特徴と竹建築の可能性
ー earth treeビレッジについて、特に竹建築の特徴を教えていただけますか?
加藤さん:earth treeビレッジは、コロナ禍をきっかけに構想が生まれました。
村の子供たちの生活圏は基本的に村の中に限られており、自分の未来を想像することが難しい環境にあります。
そこで、学校に社会科見学の機能を持たせ、子供たちが様々な可能性を見出せる場所にしたいと考えました。
竹建築については、インドネシアのグリーンスクールが先駆けとなっています。
適切な熱処理と乾燥を行うことで、最低30年は強度を保つことができ、台風や地震にも耐えうる構造計算に基づいて建設しています。
earth treeビレッジが目指す未来
ー 今後の展望について教えていただけますか?
加藤さん:私たちが目指しているのは、人と動物と自然が共存し、赤ちゃんからお年寄りまでが家族の垣根を越えて一つの家族のように生活できる場所づくりです。
earth treeビレッジの目の前に広がる水田の景色を大切にしながら、竹や土、わらなどの自然素材を活用したかっこいい建物が建ち並ぶような、新しい発展の形を示していきたいと考えています。
日本は高度経済成長を経て世界第3位のGDPを持つ国となりましたが、その過程で失ったものも少なくありません。
私たちは、お金や名声だけでない、人と動物と自然が共存する新しい成功の形を提示したいと考えています。
現在、earth treeビレッジでは現地発着のツアーや、夏休みなどを利用したスタディツアーを実施しています。
村の人々が海外で必要とされる機会を作り、その経験を次世代に伝えることで、自然と努力していく文化を育んでいきたいと考えています。
ー 最後に、読者の方々へメッセージをお願いできますか?
加藤さん:カンボジアの子どもたちに会いたい、竹建築を見てみたいと思った方は、ぜひ現地に足を運んでいただければと思います。
村の人々は日本に来ることはできませんが、日本で生まれた皆さんが会いに来てくれることを心待ちにしています。
また、「自分もそんなことをやりたかった」と思う方がいらっしゃれば、そういった思いを私たちが形にしていくことも、私たちの役割だと考えています。
皆さんの思いを託していただければ幸いです。