「誰もが誰かの支え手に」空き家を活用した多世代交流の居場所づくり ー 一般社団法人えんがお

一般社団法人えんがおは高齢者の居場所づくりから始まり、今では不登校の子どもたちや障害のある方など、様々な人が集う場所となっています。加えて9軒の空き家を活用し、誰もが誰かの支え手になれる地域コミュニティづくりに取り組んでいます。今回は医療現場で感じた「孤立」という課題に向き合う代表の濱野さんにお話を伺いました。

事業概要と活動内容

ーまずは、えんがおさんの活動内容について教えてください。

濱野さん:一般社団法人えんがおでは、徒歩5分圏内に9軒の空き家を活用し、独自のコミュニティづくりを展開しています。高齢者の居場所づくり、地域食堂の運営、家庭に居場所のない若者向けのシェアハウス、学童保育、不登校生向けのフリースクール、障害者向けのグループホームなど、運営している施設はさまざまです。

子供から高齢者まで、障害の有無や就学状況に関係なく、様々な人々が日常的に交流できる地域の生態系づくりを目指しています。

医療現場での経験から見えた「孤立」という課題

ー設立のきっかけについて教えてください。

濱野さん:私は元々、作業療法士として医療現場で働いていたのですが、高齢者の認知症や転倒による骨折のリハビリに携わる中で、症状の根本的な原因が老化よりも孤立化にあることを実感していました。

毎日一人で過ごし、週に1回程度しか人と話さない生活が続くことで認知症を発症したり、体力が低下して転倒・骨折するケースが多く見られたのです。

医療機関に繋がるのは症状が出てからですが、病気になる前の段階、孤立している状態からアプローチできないかと考えたことが始まりです。最初は高齢者への訪問支援からスタートし、制度では対応できない困りごとを便利屋として対応しながら、生活に繋がりを作っていきました。

その後、地域のニーズに応える形で、日中の集いの場を作ったところ、高齢者だけでなく不登校生も集まるようになり、さらに障害者施設や若者向けシェアハウスなど、様々な機能を持つ場所へと発展していきました。

独自の支援モデルと強み

ーえんがおさんならではの特徴について教えてください。

濱野さん:最大の特徴は、社会的に「支援される側」と呼ばれる方々が「支援する側」に回っているという点です。職員が一方的に支援するのではなく、認知症の方が不登校生を支えたり、精神障害のある方が認知症の方をサポートしたり、虐待を受けていた若者が同じような境遇の若者を助けたりと、互いに支え合う関係性が生まれています。

この「地域のプレイヤーに変わっていく」という変化こそが、私たちの活動の核心です。

多様な人々が集う居場所づくり

ー空き家を活用されているとのことですが、定期的に利用者の方が集まるのでしょうか。

濱野さん:9軒の空き家のうち1つを地域サロンとして活用しており、この場所がハブとなる拠点になっています。いつでも来ていい場所として開放しており、現在も不登校生や認知症の高齢者、家庭に居場所のない若者などが集っています。

また、月に1回程度、餅つきやクリスマスパーティーといった季節のイベントも開催しています。

寄せられる喜びの声

ー利用者の声として多いのはどんなものでしょうか?

濱野さん:皆さんから「寂しくなくなった」「人とのつながりを感じられるようになった」「居場所ができた」という声をよく聞きます。

特に印象的なのは、「誰かの役に立てることが嬉しい」という声です。これは私たちが大切にしている「支援される側から支援する側へ」という理念が、実際に利用者の方々の実感として表れているのだと感じています。

「子供館」開設など、これからの展望

ー今後の活動について教えてください。

濱野さん:現在特に注力しているのが、子供の居場所づくりです。従来、障害のある子供や不登校の子供たちは、同じ境遇の子供たちとしか交流する機会がありませんでした。

そこで、様々な遊具を備えた室内遊び場「子供館」を新設し、学校に通う子も通わない子も、障害のある子もない子も、すべての子供たちが一緒に遊べる空間を作ろうと考えています。

活動への支援を募集中

ー読者へのメッセージをお願いします。

濱野さん:私たちは地域密着型の小さな活動を展開していますが、このような取り組みを応援してくださる企業様や個人の方々を募集しています。

寄付で成り立っている部分も大きいため、ご支援いただける方は公式ホームページの問い合わせフォームからご連絡ください。また、最新の活動情報はInstagramで発信していますので、ぜひご覧頂ければ幸いです。