子どもたちが自分のやりたいことを見つけ、ふるさとを好きになってほしい——。そんな思いで活動を続けるNPO法人ぐるったネットワーク大町。地元の子どもたちへの体験プログラムの提供にとどまらず、都会の子どもたちに向けた新たな取り組みも計画しています。25年以上続く地域密着型の人材育成の現場を取材しました。
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サービス概要
ーどのような活動をされていますか?
小林さん:私たちの団体名の「ぐるった」とは「周辺」や「まわり」という意味の方言で、この地域の資源や活動する人々をぐるっと繋いで、地域の魅力を発信していくという思いも表しています。
現在は、自然環境の保全、子どもたちの体験や学びの場づくり、食文化の発信・提供をとおした観光客へのおもてなしなど、地域資源と人を繋ぐ活動を幅広く展開しています。
設立の経緯
ー団体設立のきっかけについて教えてください。
小林さん:活動は1999年、大町市にある「わっぱらんど」という農業用温水路の整備から始まりました。木が生い茂り荒れていた場所を、約80人もの市民が集まって整備計画を立て、公園として再生させていったことがきっかけです。それには土木業、大工、設備屋、造園業、農家に、歯科医師や子育て中の母親など、多様な人々が得意分野を持ち寄ってボランティアで関わりました。
この活動を通じて、「自分たちのまちは自分たちでつくる」という思いが育まれ、私たちの活動の原点となりました。2007年に「わっぱらんど」に携わるメンバーが呼びかけ人となって、市民活動のネットワークを発足させ、2010年には「NPO法人ぐるったネットワーク大町」として法人化し、より組織的な活動を開始しました。
特徴やアピールポイント
ー特に力を入れている取り組みについて教えてください。
小林さん:設立から15年を経て、大町の未来のために注力している分野が「子ども事業」です。子どもの成長段階に応じたプログラムを提供しており、最初の入口として野外体験があり、中高生には起業体験、大学生にはインターンシップ、そして各年代でボランティア活動と、体系的な育成を行っています。
年間を通じて自然観察やカヌー、雪遊びといった野外体験や、わっぱらんどの整備、竹林整備などのボランティア活動も実施。自転車イベントでの食品提供のおもてなしには小学生から大学生まで参加しています。夏休みの「宿題片づけ隊」というイベントでは、小中学生が学習者として、高校生・大学生や地域の方々がボランティアとして参加する形で、世代間の交流も図っています。
利用者の方々と接する際に意識しているポイント
ー活動を通じて大切にされていることは何ですか?
小林さん:地域の過疎化が進む中、子どもたちには様々な体験を通じて自分のやりたいことを見つけ、多様な大人との出会いを経験し、ふるさと大町を好きになってほしいです。地元を離れることがあっても、「いつか戻りたい」という動機の一つになってほしいと思ってやっています。
この変化の激しい時代に生き抜く力を育みたいと、3年前からはアントレプレナーシップ教育の支援も開始し、子どもたち自身が企画したお店を出店する体験も行うなど、自主的にチャレンジする起業家精神を育む取り組みも重視しています。
今後の取り組みや展望について
ー今後チャレンジしていきたいことはありますか?
小林さん:これまで地元の子どもたちを中心に活動してきましたが、都会の子どもたちにも大町での体験機会を提供して、この地域の素晴らしさと課題を伝えたいと考えています。
私自身、東京育ちで、地方でお米や水が生まれる現場や自然と共に生きる暮らしを知ったのは大人になってからでした。都会と地方のギャップに驚きましたが、都会で育って進学・就職すると、そういったことを知る機会がなかなかありません。都会の子どもたちに、大町での体験を通じて新たな発見をしたり、持続可能な未来について考えたりするきっかけを提供したいと考えています。
記事を読んでいる方に向けたメッセージ
ー最後に、活動に興味を持った方へメッセージをお願いします。
小林さん:地元の方はもちろん、都市部の方々にも活動に参加していただけると嬉しいです。昨年は香港の大学から2名のインターンシップ生を2ヶ月間受け入れるなど、国際的な広がりも見せています。詳しい情報はホームページやSNS(FacebookやX)で発信していますので、ぜひご覧ください。