人形劇などを通じて、様々な困難を抱える子どもたちに寄り添う活動を展開する「NPO法人 舞台アート工房・劇列車」様の代表・釜堀様へインタビュー致しました。貧困や移民問題など、複合的な困難を抱える子どもたちに対して、一元的な「解決」を提供することは容易ではありません。だからこそ重要となる「伴走」の姿勢や、アートが持つ力を活用した支援の在り方についてお話いただきました。
人形劇を通じて困難を抱える子どもたちに寄り添う
ー貴団体の主な活動地域や、活動の内容について教えてください。
釜堀様:私たちの主な活動は、子どもたちや親子の皆さまに人形劇を届けたり、関連したワークショップを提供したりすることです。主に福岡県を中心に活動しており、学校や各種施設などの希望する場所に赴いて公演やワークショップを行っています。
ー特に困難を抱えたお子様たちへの活動に注力されているとのことですが、そのコンセプトで活動を展開するに至った経緯について教えてください。
釜堀様:私たちの人形劇は、困難を抱えた子どもたちに寄り添い、一緒に歩んでいくことを目指しています。例えば、不登校の少年や虐待経験のある少女を主人公にした作品など、様々な困難に直面している子どもたちを励ます作品を制作しています。
このような活動を始めたきっかけは、NPOのミッションとして「どんな子どもにも劇を、文化を」という言葉を掲げたことです。しかし、通常の公演では、最も劇を必要としている子どもたちやご家庭に届かないという課題がありました。そこで、困難を抱えた子どもたちに直接アプローチする活動を始めました。
また、活動メンバーの中にも、子どものころから様々な困難を抱えながらも、アートの力を支えとすることでそれを乗り越えてきたという者たちがおります。そういったメンバーたちが参加している団体ですから、「困難を抱えた子どもや親子の皆さまに、自分を支えていく力としてのアートを提供したいという」コンセプトに至ったのは自然な流れだったかもしれません。
目指すべきは「伴走」
ー劇を観た子どもたちやご家庭に対して、具体的にどのような効果や変化を期待されていますか?また、活動によって解決されたい世の中の課題はどういったものになりますでしょうか。
釜堀様:実際に、困難を抱えた子どもたちと接していると、一人の子どもや家庭が複合的な困難を抱えていることがわかります。例えば、外国籍の子どもの場合、言語や文化の障壁だけでなく、社会的孤立や経済的問題など、様々な困難が重なっています。このように様々な要素が重なり合った困難を「解決」するというのは、決して簡単なことではありません。
そのため、私たちは「伴走」という姿勢を大切にしています。アートを通じて、子どもたちが自分を支える力を見つけ、前に歩み出すきっかけを作ることを目指しています。具体的には、劇を見たりワークショップに参加したりすることで、社会的孤立の解消につながったり、新しい気づきが生まれたりすることを期待しています。
臨時的な居場所から恒常的な支援へ
ー今後の展開について教えてください。
釜堀様:現在、私たちは2つのプロジェクトを展開しています。1つは支援団体と連携して文化体験を届ける「パペットシアター・プロジェクト1(ワン)」、もう1つは公共劇場を借りて定期的なプログラムを提供する「パペットシアター・プロジェクト2(ツー)」です。
特に「プロジェクト2」では、多様なニーズに応えるため、食材支援や相談員の配置なども行っています。今後は、この臨時的な居場所をより恒常的なものにしていくことが課題です。同時に、支援団体との連携も継続し、文化支援の幅を広げていきたいと考えています。
将来的には、このような取り組みが全国に広がることを願っています。私たちの活動を全国のアート系団体に発信し、同じ志を持つ仲間が各地で活動を始めることを期待しています。
勇気を出して一歩踏み出すことの大切さ
ー最後に、記事を読まれる方々へのメッセージをお願いします。
釜堀様:思い切って一度外に出てみませんか。一歩外に出ると、何かが変わり始めるかもしれません。アートに触れることが、好循環を生むきっかけになるかもしれません。ぜひ勇気を出して半歩でも踏み出してみてください。そこから新しい可能性が広がるかもしれません。