1966年の設立以来、全国の青少年や教育者とともに歩んできた日本キャンプ協会。
子どもたちの健全な発達を目指し、安全で教育的なキャンプ活動を推進してきた同協会は半世紀以上にわたり、自然体験活動を通じた人材育成に取り組んでいます。
今回は日本キャンプ協会の松橋さんに活動内容や今後の展望について、お話を伺いました。
教育的効果を重視した組織キャンプの普及を目指して
ー 日本キャンプ協会の活動内容について詳しくお聞かせください。
松橋さん:日本キャンプ協会は1966年に設立された団体で、全国の青少年団体や野外活動の研究者、教育者によって設立されました。
活動の目標は、野外活動としてのキャンプの普及と振興を図り、国民の心身の健全な発達に寄与することです。
具体的には、子どもたちから青少年、ファミリー、中高年やシニア世代、スペシャルニーズのある方々まで、幅広い層に向けて自然体験活動としてのキャンプを届けています。
全国47都道府県に日本キャンプ協会に登録しているキャンプ団体があり、総称して都道府県キャンプ協会と呼んでいます。
このほか、野外教育団体・施設などに登録いただいており、これらの団体と協力しながら、子ども向けのキャンププログラムやファミリーキャンプの主催、指導者の養成などを行っています。
ー キャンプの歴史について教えていただけますか。
松橋さん:アメリカでは1861年に初めて学校キャンプが行われたとされる記録があり、産業革命を経たイギリスでは余暇にキャンプが楽しまれていたようです。
日本のキャンプの歴史も100年以上前にさかのぼります。
何度かキャンプブームが起こってきましたが、私たちが行う教育的キャンプは、一般的なレジャーとしてのキャンプとは異なる側面を持っています。
設立当時から、子どもたちの健全な成長を支援したいという教育者たちの強い思いがあり、それは現在も変わっていません。
指導者の存在が生み出す、キャンプならではの教育効果
ー 日本キャンプ協会の強みやアピールポイントをお聞かせください。
松橋さん:自然体験活動としてのキャンプには大きな教育的効果があります。
その効果に沿って指導できる指導者を、都道府県キャンプ協会や野外教育団体・施設・大学・専門学校と協力して育成している点が私たちの強みです。
キャンプを通じて育まれる力として、コミュニケーション能力や物事をやり遂げる力、たくましさ、積極性など、文部科学省が掲げる「生きる力」があります。
私たちは、そういった力を育むキャンプ活動を提供しています。
多様な人材が支える指導者育成システム
ー 指導者になる方々はどういった職業の方が多いですか?
松橋さん:指導者の層は非常に多様です。
体育・スポーツや福祉・保育などの分野を学ぶ大学や専門学校でキャンプ指導者の資格を取得する学生、教育現場で活躍する先生方や児童館職員、地域コミュニティで子どもたちと接する機会の多い方々、キャンプ愛好者など10代後半から60代まで幅広い年齢層の様々な経歴を持つ方々が指導者として活躍しています。
都道府県キャンプ協会や野外教育団体・施設では一般の方向けの養成講習会も開催しており、キャンプを通じて子どもたちの成長をサポートしたいという思いを持つ方々に広く門戸を開いています。
教育現場との連携による子どもたちの成長支援
ー 学校教育との関わりについてお聞かせください。
松橋さん:近年、子どもたちの生活が多忙化する中で、学校でのキャンプ活動は減少傾向にあります。
以前は1泊で行っていた活動が日帰りになるなど、プログラムの簡略化も見られます。
しかし、そうした状況下でも、日本キャンプ協会の指導者たちは学校現場をサポートし続けています。
教員自身が指導者資格を取得するケースも多く、子どもたちの成長のためにキャンプ活動を取り入れたいと考える教育者たちと協力関係を築いています。
社会課題に応える、これからのキャンプの可能性
ー 今後の展望についてお聞かせください。
松橋さん:現在、私たちは中期事業計画として「社会の隅々までキャンプを届けよう」というビジョンを掲げています。
より多くの方々に、身近な自然の中でキャンプを楽しんでいただきたいという想いからです。
現在は持続可能なキャンプ文化の普及を目指し、キャンプの安全や環境、マナーへの配慮を呼びかけるグッドキャンパーキャンペーンを展開しています。
また、従来の組織キャンプに加えて、現代社会が直面する様々な課題に対応した新しいプログラムの開発にも力を入れています。
例えば、防災キャンプを通じた災害対応力の育成、子どもの貧困対策、スマートフォン依存症への対応、地域創生に貢献するキャンププログラムなど、社会のニーズに応える活動を展開しています。
安全で効果的なキャンプを支える指導者の存在
松橋さん:私たちが行なっている活動の多くは、指導者が存在する「組織キャンプ」です。
単に自然の中で過ごすだけでなく、指導者が明確な目標やねらいを設定し、それに応じたプログラムを組み立てます。
例えば、野外炊事やオリエンテーリングなどのアクティビティを小グループで行うことにより、協調性や達成感を育みます。
指導者は参加者の安全を確保しながら、それぞれの目標達成をサポートしていきます。
ー 最後に、読者へのメッセージをお願いします。
松橋さん:キャンプは非日常の中で過ごす、心を豊かに育む体験です。
自然体験が多いほど、自律性や積極性、協調性、自己肯定感、探究心などが高まる傾向があることがデータでも示されています。
お子さんと接する機会のある方々には、ぜひ自然の中での活動を意識していただければと思います。
また、指導者に興味をお持ちの方は、都道府県キャンプ協会や野外教育団体・施設が開催する養成講習会にご参加ください。
オンラインや1泊2泊の講習会など、様々な形式で開催しています。
安全で教育的なキャンプを届けられる仲間が増えることを、私たちは心待ちにしています。
自然体験活動を通じて、次世代を担う子どもたちの健全な成長を、ともに支援していきましょう。