就職活動は、学生が社会に踏み出す重要な一歩である。しかし、企業が求める人材像と学生の理解との間にはしばしばギャップが生じ、それが入社後のミスマッチや早期離職につながることも少なくない。そんな中、人材アセスメントのプロフェッショナルとして18年以上のキャリアを持つ「ジョブエール」塾長松本保美氏が、その専門性を活かした独自の就職指導を展開している。
就職指導塾「ジョブエール」は、単なる就活テクニックの指導にとどまらない。企業の人事部での採用・研修・評価業務の経験と、人材アセスメントにおけるコンサルタントとしての専門知識を組み合わせ、学生一人ひとりの特性に合わせた実践的な指導を提供する。さらに、月額5万円という破格の料金設定で、質の高い就職支援を実現。創業から14年、多くの卒業生たちが様々な業界で活躍している。
今回、このユニークな就職指導塾の魅力と、松本氏が目指す「本当の意味での就職支援」について詳しく話を伺った。
人事のプロフェッショナルが立ち上げた就職指導塾
「就職指導塾ジョブエール」は、大学生・大学院生・専門学校生を対象とした就職指導に特化した塾である。2010年の創業以来、一貫して高品質な就職指導を提供し続け、現在は約140名の就活生が在籍。そのうち9割がオンラインでの指導を受けている。
松本氏は大手企業の人事部でのキャリアを経て、2010年に当塾を設立。設立の背景には3つの理由があった。「学校の就職支援に疑問を感じた」「社会に出る前にきちんと世の中のことを教えておく必要がある」「人事部での経験を若い人たちに還元したい」という強い思いだ。
ー創業のきっかけについて詳しく教えてください。
松本:「かつて人事部にいた時、新入社員が『こんなはずじゃなかった』と言って簡単に辞めてしまう若者が多いという現状を目の当たりにしました。それは社会に出る前の準備が十分でないことが一因だと感じていました。また、学校の就職指導だけでは実際の企業の求める人材像と学生の理解にギャップが生じやすいという問題意識もありました」
他社にはない独自の強み:人材アセスメントの専門性
ジョブエールの最大の特徴は、創業者である松本氏が持つ人材アセスメントの専門性にある。一般的な就活塾が就活テクニックの指導に注力する中、松本氏は18年以上にわたる人材アセスメントにおけるコンサルタントとしての経験を活かし、より本質的な指導を提供している。
ー人材アセスメントとは具体的にどのような業務なのでしょうか?
松本:「人材アセスメントとは、人材のスキルや適性、能力など、第三者が客観的に分析・評価し、可視化することで、効果的な人材育成や人材配置を行うための手法のことを指します。つまり、個人の行動特性や対人関係のスタイル、思考パターンなどを科学的に分析し、その人材が最も活躍できる場所を見出すための専門的な評価手法です。
私は大手企業向けに、新規プロジェクトのメンバー選定や管理職への昇進候補者の評価など、重要な人事判断の場面でこの
専門知識を活かしてきました」
具体的な評価プロセスは以下のような流れで行われる:
- 行動観察:様々な課題に取り組む様子を観察
- プレゼンテーション演習:論理的思考力、表現力の評価
- ビジネスゲーム:問題解決力、リーダーシップの観察
- グループディスカッション:対人関係スタイルの分析
- 企画立案演習:創造性、実行力の評価
- 多面的な能力評価:複数の評価軸で分析
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ
- ストレス耐性
- チームワーク力
- 創造性
- 詳細なレポート作成:観察結果を数値化・可視化
- 行動特性のレーダーチャート
- 強み・弱みの詳細な分析
- 最適な配置に関する提言
- 育成に向けたアドバイス
ー就職指導にどのように活かされているのでしょうか?
松本:「就活生の場合、自己分析が不十分なまま志望企業を決めてしまうケースが多いんです。私は人材アセスメントの手法を使って、その学生の本質的な特徴を把握します。例えば、表面的には営業職を志望していても、実は緻密な分析業務の方が向いているというケースもあります。
また、時間をかけてじっくりと育成をする会社より、若いうちから高い成果を与えられた方が能力を喫記できるという人もいます。企業側の求める人材要件も深く理解していますので、学生の特性と企業の求める人物像のマッチングを、より専門的な視点で行うことができます。履歴書の書き方や面接対策以前に、その学生が本当に活躍できる企業や職種を見極めることが重要なんです」
この専門的なアプローチは、大手企業の人事部での経験と組み合わさることで、より実践的な就職指導を可能にしている。企業の表向きの情報だけでなく、実際の社風や求める人材像を深く理解した上で、学生一人ひとりに最適なアドバイスを提供できる点が、ジョブエールの大きな強みとなっている。
松本:「最近は、AIによる就活支援も増えていますが、人材アセスメントの専門家による深い理解と洞察は、AIにはまだ難しい部分です。特に、その人の潜在的な可能性を見出し、将来の成長も見据えた企業選びのサポートは、長年の経験と専門知識を持つ人間にしかできない仕事だと考えています」
独自の指導メソッドで就活生を支援
ジョブエールの指導は、単なるエントリーシートの添削や面接対策にとどまらない。企業研究や業界分析を通じて、受験先企業が求める人材像を徹底的に分析。その上で、学生一人ひとりの特性に合わせた指導を行う。
松本氏は、企業の公式情報だけでなく、人事部時代のネットワークを活かした非公開情報も含めて、企業の実態を把握。それを基に、より実践的なアドバイスを提供している。
講師陣も、松本氏の個人的なネットワークから厳選された約20-30名のプロフェッショナル人材で構成されている。大学時代の友人や元人事部の同僚、起業家など、様々な背景を持つ講師が、学生のニーズに合わせて指導を行う。
社会を見る目を養う:就活指導の本質
松本氏が特に重視しているのは、就活を通じて社会を広く見る力を養うことだ。近年、「ホワイト企業」志向が強まる中、その是非についても独自の視点を持っている。
ー就活指導で特に大切にしていることは何でしょうか?
松本:「就活のテクニックは必要な要素ですが、それだけに終始する指導はしたくありません。世の中で何が問題になっているのか、どういう会社が成長しているのか、どういう業界が衰退しているのかなど、物事を俯瞰して見る力を養ってほしい。例えば、最近は働きやすさばかりを追求する『ホワイト企業』志向が強いですが、実は働きやすいだけで働きがいのない環境も増えています。そういった現実も含めて、多角的な視点で就職を考えられるよう指導しています」
この姿勢は、情報の取捨選択についても同様だ。メディアの情報や特定のグループ内での情報に偏ることなく、多様な視点から物事を見る重要性を説く。「何でも鵜呑みにしないで、まずは疑ってみる」これは松本氏がポリシーにしている言葉である。
松本:「様々な情報を与えて『これをどう思う?』と考えさせることを大切にしています。自分の価値観と照らし合わせながら、本当にその会社が自分に合っているのかを深く考えられる力を養っていきます」
社会貢献を体現する破格の料金設定
ジョブエールの月額5万円という料金設定は、人材アセスメントの専門家による指導としては驚異的な低さだ。一般的な就活塾が30万円から40万円の料金を設定する中、この価格設定には松本氏の強い思いが込められている。
ー この料金設定についてどのようなお考えがあるのでしょうか?
松本:「これは完全なボランティアです。格好よく言えば、社会貢献です。私の本業は研修講師と人事コンサルタントとしての仕事で、そちらの方が本来的には収入源なんです。就職指導塾については、学生さんが少しアルバイトを頑張れば払える金額に抑えたいという思いがありました」
料金体系は以下の2つのコースを用意している:
- お試しコース(月額2万円)
- 基本的な就活指導
- 自己分析サポート
- エントリーシート添削
- 集中指導コース(月額5万円)
- 専門的な人材アセスメント
- 個別カウンセリング
- 面接対策
- 企業研究支援
- 内定後のフォローアップ
多くの学生は、まずお試しコースで1ヶ月受講し、その後3万円を追加して集中指導コースに移行するという段階的なアプローチを取っている。
松本:「料金を抑えているからといって、指導の質を落とすことは一切ありません。むしろ、人材アセスメントの専門家として培ってきたノウハウを全て投入しています。将来の日本を支える若者たちに、良質な就職支援を提供することが、私の使命だと考えています」
多彩な分野で活躍する卒業生たち
創業から14年、ジョブエールの卒業生たちは様々な業界で活躍している。その実績は、指導の質の高さを物語っている。
ー 卒業生の方々はどのように活躍されていますか?
松本:「10年前に指導した学生が今では36歳になり、様々な分野で活躍しています。例えば、念願だったアナウンサーとしてMCの仕事を獲得した卒業生や、グローバル企業で海外赴任を果たした方など、うれしい報告をいただきます。」
具体的な卒業生の活躍例:
- メディア業界
- 地方局のアナウンサーとして活躍
- 制作会社でディレクターとして従事
- スポーツ専門チャンネルでMCを務める
- グローバル企業
- アジア圏での海外駐在員として活躍
- 外資系企業の管理職として従事
- 国際的なプロジェクトのリーダーを務める
- 起業家として
- IT企業を立ち上げ成長軌道に
- 社会課題解決型のベンチャーを創業
- 家業を継承し新規事業を展開
松本:「特に嬉しいのは、卒業生たちが単に就職を果たすだけでなく、その後もしっかりとキャリアを築いているということです。時には転職や留学を経験する人もいますが、それも含めて自分なりの働き方、生き方です。それを見るのが私たちの一番のやりがいですね」
また、卒業生のネットワークも、現役生にとって貴重な財産となっている。
松本:「時には、卒業生の方々に特別講師として来ていただくこともあります。実際に社会で活躍している先輩の生の声を聞くことは、現役の就活生にとって大きな刺激になります。また、業界の最新情報や、実際の職場の雰囲気など、外からは見えにくい情報も得られる貴重な機会となっています」
このように、ジョブエールの実績は、単なる就職率や内定獲得数ではなく、卒業生たちの着実なキャリア形成として実を結んでいる。それは、テクニックだけでなく、「働き続ける力」を育てるという松本氏の教育理念が、確かな成果を上げている証でもある。
働き続ける力を育てる―人生の選択肢を広げながら
ー入塾を考えている方へメッセージをお願いします。
松本:「皆さんの人生の選択肢は、たくさんあっていいんです。最初に入った会社を変わってもいい。海外の大学で学び直したい気持ちが芽生えても、それも素敵な選択です。少し立ち止まってゆっくり考える時間が必要になることだってあるでしょう。
でも、その中で私が一番大切だと思うのは、働くことを諦めないでほしいということ。仕事を通じて社会とつながることで、新しい発見があり、時には挫折も経験する。でも、小さな目標を達成できた時の喜びや、誰かから『ありがとう』と言われた時の温かさは、かけがえのない自信になっていきます。
だからこそ、社会に出る前の今、私たちと一緒に『働き続ける力』を育んでいきませんか?それは単なる就職のためのスキルではなく、皆さん一人ひとりが自分らしく生きていくための大切な力になるはずです」