“最後の砦”として選ばれる個別指導塾のメソッド- 慶京セミナー代表 滝野光恭氏が明かす指導哲学

個別指導塾が数多く存在する中、京都と長野で独自の教育メソッドを展開する慶京セミナーが注目を集めています。代表の滝野光恭氏は、自身も大学受験で英語の偏差値31から這い上がって慶應義塾大学に合格し、その体験を指導に活かしています。

2008年の創業以来、京都府の二条、亀岡、宇治小倉、長野県の大町に計4教室を展開。特に英語や論理思考教育に力を入れ、「なぜその知識が必要なのか」という背景まで丁寧に説明する指導スタイルが、多くの生徒や保護者から支持を集めています。また、入塾テストを実施せず、生徒の持つ可能性を信じて指導するという姿勢も特徴的です。

今回は滝野氏に、個別指導における独自の指導方針や、「最後の砦」として選ばれる理由、そして今後の展望についてお話を伺いました。

全学年対象の受験特化型個別指導

ーまず、慶京セミナーの概要について教えてください。

滝野光恭代表当塾は小学生から高校生、浪人生、場合によっては大学生まで、幅広い学年の生徒さんを受け入れています。基本的には受験指導がメインで、受験学年以外の生徒さんには授業の先取りや定期テスト対策も行っています。

受験学年の生徒さんが6-7割を占めており、入塾されるご家庭の多くが受験を意識されています。他の個別指導塾と似ている部分もありますが、受験に特化した指導を展開しているのが特徴です。

英語教育への強いこだわり

ー慶京セミナーを設立されたきっかけを教えていただけますか?

滝野:大学時代から東京で塾のアルバイトをしていました。卒業後に京都に来て、特に英語の指導では都内と比べてかなりの遅れを感じたんです。自身の理論を使えば高い合格率が出せるという確信があり、2008年に創業しました。

ー滝野先生ご自身も英語の偏差値が低かったとホームページで拝見しました。

滝野:そうですね。代々木ゼミナールの模試偏差値で30-31くらいの浪人スタートでした。現役時代は配点の高い英語を疎かにして好きな日本史ばかりに時間を使い、酷い結果に終わりました。「英語ができていれば確実に合格できたのではないか」という悔しさと妙な自信が、浪人を決意する大きなきっかけになりました。


浪人してから本格的に勉強を始めましたが、まず分からないことが多すぎたので、プライドを捨てて中学英語から2ヶ月かけてやり直しました。その後、高校英語に入った時の理解度が格段に上がり、「分からないことがあれば徹底的に戻る」ことの重要性を実感しました。そして基礎を完全に理解して使いこなせたら応用もきくようになり、初見問題に対応できるのだと実感しました。

進捗管理と理解度を重視した指導体制

ー他塾との違いについて教えてください。

滝野:他のオンライン塾からの転塾生が多いのですが、彼らの声で多いのが「進捗管理は良くできているが、分からないところの指導に時間を割いてもらえない」というものです。多くのオンライン塾では確認テストで授業時間の大半を使ってしまい、肝心な理解度の向上にまで手が回っていないようです。前の塾でどのような悩みを抱えていたのか、しっかりとヒアリングするように心がけています。

特に注意しているのが、親御さんと生徒さんとの希望の違いです。どちらのご希望で転塾を決めたのか、親子間での認識のずれはないかなど、双方からしっかりと話を聞くようにしています。

また、与えられた参考書が理解できずに進捗が遅くなるケースも少なくありません。当塾では、一人ひとりの理解度に合わせて最適な参考書を選び直すなど、柔軟な対応を心がけています。

参考書に関しては、当塾では非常にこだわりを持って選定しています。同じ内容でも、生徒さんによって合う合わないがはっきりと分かれます。「この参考書が合わないからダメなんだ」と諦めてしまう前に、別のアプローチを提案することで道が開けることも多いんです。

例えば、暗記が得意な生徒さんと論理的な思考が得意な生徒さんでは、同じ単元でも異なるアプローチが効果的です。当塾では、生徒さん一人一人の特性を見極めた上で、最適な教材を選定しています。

さらに、近年の大学入試は、従来の学力試験だけでなく、様々な入試形態が増えてきています。特に推薦入試や総合型選抜では、教科の成績以外の要素も重要になってきます。

そのため当塾では、教科指導だけでなく、志望理由書の作成支援や面接対策なども行っています。特に自己分析については、生徒さんの強みを引き出し、それを言語化し論理的に表現する力を養う指導を心がけています。志望理由や総合選抜でも9割以上が合格しております。

生徒に寄り添う丁寧な指導

ー指導する際に特に意識されていることはありますか?

滝野講師全員に伝えているのが、「1回1回の授業の意義を生徒さんに感じてもらう」ということです。授業の最初と最後の3-4分で、今やっていることが最終的な目標にどう繋がるのかを必ず説明しています。

特に内気な生徒さんや低学年の生徒さんは、質問したくても上手く表現できないことが多いです。本当の悩みが何なのかを、こちらから少しずつ聞き出していく必要があります。雑談なども交えながら話しやすい雰囲気を作り、1-2ヶ月すると信頼関係ができてきて、本音を話してくれるようになります。

当塾の講師陣は、京都大学など難関大を主とした大学生・大学院生と社会人講師が混在しているのが特徴です。完全に実力次第で生徒さんを担当してもらっており、そのため一人一人の意識も高くなっています。学力、指導力に関して「他塾とはレベルが違う」とご評価いただいています。

他塾からの転塾者が多い理由

ー受験生の‟最後の砦”として選ばれる理由を教えてください。

滝野他塾からの不満は主に3点あります。

1つ目は、講師が問題を解けない、すべてを暗記で済ませようとする、知識の背景を教えてくれないという点です。当塾では「なぜその知識が必要なのか」という背景まで説明すると、生徒さんが驚かれることも多いです。

2つ目は、特に最近の個別、オンライン塾に多いのですが、決められた参考書のルートに従えないと志望校を下げるよう促されることです。当塾では参考書を数多く研究しており、生徒さんに合った別のルートを提案することで学力が上がったケースも多々あります。

3つ目は面談時間がない、もしくは少ないという問題です。慶京セミナーでは40-50分という長めの面談時間を設けています。面談時間を長く設定しているのには理由があります。特に面談の30-40分目あたりから、急に本音を話してくださる方が多いんです。それまでの会話が全く違う方向に展開することもあり、やっと本質的な問題が見えてくることも少なくありません。

この時間をしっかり取ることで、生徒さんや保護者の方の本当の悩みや不安に気付くことができ、より効果的な指導方針を立てることができています。

1対1と1対2、それぞれの特徴を活かした指導

ー提供されているコースについて詳しく教えてください。

滝野:基本的には、1対1 or 1対2のオーダーメイド指導を提供しています。単に問題を解かせ解説するだけでなく、他塾が授業冒頭でやるような単語テストを中盤に配置するなど、工夫を凝らしています。授業開始ぎりぎりまで勉強して一時的な記憶で乗り切ろうとする生徒も多いので、時間を置いてテストすることで本当の定着度が分かります。

特定の講師を指名したい場合は、1対1のマンツーマンコースも用意しています。私を含めて希望講師を完全指名できる制度です。2時間みっちり密度の濃い授業を行い、その後の復習に時間を充てられるようにしています。ただし、1対1の場合は授業中に演習時間が取れないため、テストなどでアウトプットの確認を念入りに行っています。

面白いことに、1対1と1対2の両方を経験した生徒さんから「1対2の方が自分の理解度を実感できた」という声もあります。他の生徒の解答時間中に自分の理解度と向き合える時間があるからですね。

入塾テストなしの理由

ー入塾テストを実施されていないそうですが、その理由を教えていただけますか?

滝野:無料体験授業でレベルを測る問題は用意していますが、正式な入塾テストは行っていません。例えば偏差値が30台の生徒さんを入塾テストで切ってしまうと、その生徒の可能性も切ってしまうことになります。

現実的なスタート地点は伝えますが、1-2年でできるベストの方法を提案するようにしています。実際に目標を達成した生徒もいますので、可能性を信じて指導していきたいと考えています。当塾の合格実績からも、入塾テストで選別していると思われがちですが、決してそんなことはないです。

継続力の重要性

ー生徒さんへ伝えている「モチベーション維持のコツ」を教えていただけますか?

滝野:日常の確認テストの出来が悪い時は厳しく指導しますが、模試に関しては少し異なるアプローチを取っています。模試には不確定要素も多く、本番慣れの問題もあるので、点数や偏差値が低くても過度に気にしないよう指導しています。

むしろ重要なのは復習です。模試を受けっぱなしにする生徒が7割ほどいる中で、1回でも復習するだけで大きな差がつきます。2週目以降の復習まで行う生徒は5%もいないでしょう。ここまでやれば、必ず上位に立てると確信しています。それによりE判定からの合格劇も多く生まれるのです。

また、最近は参考書の情報も豊富で、多くの受験生が似たようなアプローチで勉強しています。そうなると、最後は継続力の差が如実に表れます。当塾では、モチベーション維持のために、目標を掲げたら必ず周囲に宣言することをお勧めしています。宣言することで後に引けなくなりますし、合格に向けて一歩前に進めます。

講師育成と情報共有の取り組み

ー今後の展望についてお聞かせください。

滝野:どんなに優秀な講師でもクオリティやアプローチに差が出てくるのは避けられない部分があります。特に最近はオンライン授業も増えてきているので、オンライン会議を増やすなどして、より密な情報共有を図っていきたいと考えています。

また、ここ1-2年で入試形態も大きく変化してきています。共通テストを受ける国立志望の生徒さんも多いですが、推薦入試や総合型選抜(旧AO入試)を選択する生徒さんが増えてきています。そのため、志望理由書の作成や自己分析に関する指導についても、しっかりと講師研修に取り入れていく予定です。

最後に

ー入塾を検討されている方へメッセージをお願いします!

滝野:当塾の指導方針は、決して派手なものではありません。地道な努力の積み重ねを大切にし、一人一人の生徒さんに合わせた指導を心がけています。

特に大切にしているのは、諦めないことです。偏差値が低くても、基礎からしっかりと積み上げていけば必ず道は開けます。私自身の経験からも、そのことを強く信じています。

最後は本当に努力を継続できるかどうかが重要です。当塾は、その継続をサポートする「最後の砦」として、これからも生徒さん一人一人の夢の実現をサポートしていきたいと考えています。