望まない妊娠に悩む人々に寄り添い続けて8年。認定NPO法人こうのとりのゆりかごは、電話相談から性教育まで、幅広い支援活動を展開しています。「一人で悩まないで」というメッセージとともに、命の大切さを伝え続ける同法人の取り組みについてお話を伺いました。
設立の経緯と主な活動内容
ー設立のきっかけと主な活動内容について教えてください。
人見滋樹理事長:『こうのとりのゆりかご』とは『親が自分で育てられない新生児』を受け入れるためのものです。日本で最初に熊本慈恵病院で『こうのとりのゆりかご』が設置され、そこに関西からの相談数が多いと知り、関西にも同様の受け皿が必要だという考えでこの活動を始めました。
相談件数の推移と現状
ー年間の相談件数はどのくらいでしょうか?
人見滋樹理事長:コロナ禍以降、相談体制が変化してきています。当初は多い時で年間200件を超えた相談も、現在は数十件程度になっています。これは、全国的にSOS相談電話のネットワークが整備され、支援体制が充実してきたことも一因です。ただ、相談件数の減少は必ずしも悪いことではなく、予防的な取り組みの成果とも考えられます。
教育教材の開発と提供
ー性教育に関する教材について詳しく教えてください。
人見滋樹理事長:私たちは性教育のための絵本
「若者のための『性』と『いのち』の話」
「幼児児童のための『性』と『いのち』のはなし~たいせつなじぶん たいせつなからだ」を作成しており、これは一般の方は200円で購入できますが、学校や幼稚園など教育機関には無償で提供しています。
特徴的なのは、性について自然に理解できる温かい内容になっていることです。このような教材は他になく、多くの教育関係者から高い評価をいただいています。
相談内容と対応について
ー相談者はどのような方が多いのでしょうか?
人見滋樹理事長:「妊娠してしまったかもしれない」「親には言えない」といった相談が中心です。緊急性の高いケースでは妊娠の可能性や今後の対応についてのアドバイスで解決することもあります。
相談者は高校生から若い方まで様々で、状況に応じて専門家に確認した上で対応したり、具体的な解決策をアドバイスしたりしています。
性教育への取り組み
ー性教育に関してどのような課題意識をお持ちですか?
人見滋樹理事長:学校では体の仕組みは教えられますが、それ以外の大切な部分が欠けていることが多いのです。性行為が命を生み出す神聖な行為であることや、それが幸せな家庭につながることを、若い方々に自然に理解してもらえるような教材作りを心がけています。
今後のビジョン
ー今後の展望についてお聞かせください。
人見滋樹理事長:「自分で育てられない」ケースのひとつとして、元々妊娠するつもりのなかった若者たちの「想定外の妊娠」があります。
このような若者たちの数を「性教育」によって少しでも減らすことができたら・・という思いで、「性教育」と人の「いのち」の問題に取り組んでいます。これからもより一層「性教育」に取り組んでいきたいと思います。
悩める方々へのメッセージ
ー最後に、記事を読まれる方へメッセージをお願いします。
人見滋樹理事長:望まない妊娠で悩んでいる方、特に若い方々に伝えたいことがあります。あなたは決して悪くありません。知らないこともあって当然です。一人で悩まず、まずは相談してください。私たちには経験豊かな相談員がおり、必ず力になれると思います。
また自分を責めるのではなく、前を向いて進んでいってください。どんな選択をするにしても、それを前向きに捉え、より良い人生を築いていってほしいと思います。私たちは常にあなたの味方です。