世界には教育を受けたくても受けられない子どもたち、路上で生活せざるを得ない子どもたちが数多く存在しています。
そんな子どもたちに直接支援を届ける活動を続けている「NPO法人MASA FREE SCHOOL」の代表である寺本真将氏に、活動への想いや世界の子どもたちの現状についてお話を伺いました。
世界中の子どもたちに教育支援を
ー まずどのような方々を対象にどういった活動をされていらっしゃるかお聞かせいただけますか?
寺本氏:NPO法人MASA FREE SCHOOLとして、海外で教育を受けられない子どもたち、もっと教育を受けたい、勉強したい子どもたちのための教育支援を軸に活動しています。
例えばウクライナでは個々の子どもたちに必要な物資を届けたりしています。
また活動は海外だけでなく日本でも行っており、国内の学校や大学、企業で講演活動として、世界の子どもたちの貧困やストリートチルドレンの生き方、環境について講演を行っています。
現地に足を運び、直接支援を届ける
ー MASA FREE SCHOOL様の強みやアピールポイントについて教えてください。
寺本氏:主な活動拠点はインドとウクライナですが、本当に支援が必要な場所に支援を届けられることが強みです。
両国とも、自分自身が実際にその地に赴き、自分の目で見て、足りないものを必要な場所に直接届けられることが大きな特徴です。
また、国内での講演活動においては、世界中のストリートチルドレンと出会ってきた経験を持つ日本人として、実際に目で見て知った子どもたちの生き方や思いを、生の声として届けられることも強みだと考えています。
子どもたちとの信頼関係づくり
ー 現地の子どもたちと接する時に、どんなことを意識されていますか?
寺本氏:これは幼稚な答えになるかもしれませんが、友達になることをとても意識しています。
特に路上の子どもたちと接する時、彼らのことをもっと知りたいと思った時は、まず友達になること、彼らの信頼を得ることが大切だと考えます。
ただの知らないおじさんではなく、一人の友達として認識してもらえないと、心を開いてくれません。
また、路上で生活する子どもたちの中には、時に社会的なルールや倫理観に反する行動をする子もいます。
しかし、そういった話を聞いたり、現場を見ても動揺を見せないよう心がけています。
「それはないよね」「あり得ないよね」という反応を表情や言葉に出すことは避けています。
戦禍のウクライナで、さらなる困難に直面する子どもたち
ー ウクライナでの活動について詳しく教えてください。
寺本氏:ウクライナでは現地NGOや個人との繋がりが以前からあり、戦争が始まってからは、最初は日本から遠隔で支援を行っていました。
しかし、より支援に力を入れたいという思いから、現在は現地の人々と相談しながら実際に訪れ、教育支援や物資支援を行っています。
戦争により、子どもたちの環境は劇的に変化しました。
特に関わっている子どもたちは、元々両親と一緒に生活していなかったり、様々なものが不足している状況でした。
そこに戦争という要因が加わり、さらに多くのものを奪われることになりました。
学校に行けなくなったり、友達や家族を亡くしたという話を、涙ながらに聞くことも少なくありません。
戦争を機にオンライン教育は増えていますが、支援している子どもたちはそもそもオンライン学習に必要な機材を持っていません。
そのため、特定の施設の子どもたちに対して、タブレットなどのオンライン機材や、小さな子どもたちにはおもちゃやパズルなどを提供し、教育を継続できるよう支援しています。
映画からストリートチルドレン支援へ―活動のきっかけ
ー このような活動を始められたきっかけを教えてください。
寺本氏:私は元々は映画監督を目指していたんです。
大学で社会学を学び、社会問題を扱った映画を作りたいと考え、ハリウッドに憧れてアメリカの映画学校への留学も決めていました。
しかし、日本の大学卒業後、留学までの時間に友人と旅行に行った際、初めてストリートチルドレンや児童労働の現場に直面したのです。
それまで教科書や映像でしか知らなかった現実を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。
「今自分が訪れたい国はアメリカではない」と直感し、映画学校への入学を辞退。
代わりに世界中の貧困地域を巡る旅に出ることを決意しました。
約70カ国を巡る中で、映画のことは忘れ、出会った子どもたちのために何かできないかと考えるようになりました。
そして最初の形として、インドでフリースクールを始めることになったのです。
現地の仲間との協力体制や、日本からのアクセスのしやすさ、支援を必要とする子どもたちの多さなどを考慮して、インドでの活動をスタートさせました。
目指すビジョンとメッセージ
ー 今後の展望についてお聞かせください。
寺本氏:インドのフリースクールでは、教育支援を継続的に行っていきたいと考えています。
教育には明確なゴールがあるわけではなく、今年で終わりということもありません。
一人でも多くの子どもたちに教育の機会を提供できる場所であり続けたいですね。
ウクライナに関しては、本当に支援が必要な場所に必要な支援を届け続けていきたいと思っています。
そして、私がこれまで世界の貧困地域で見てきた子どもたちの現状や生き方を、できるだけ多くの日本の人たちに知ってもらいたい。
もしかしたら、それが最も力を入れたい部分かもしれません。
ー 最後に、記事を読む方へメッセージをお願いできますでしょうか?
寺本氏:この世界には、学校に行きたくても行けない子どもたち、食べ物が欲しくても食べられない子どもたち、家で寝たくても寝られない路上の子どもたちがたくさんいます。
そんな広い世界のことを知ってほしい。
私たちの「当たり前」は、この世界では決して当たり前ではないということを、一人でも多くの人に知ってもらいたいですね。
そして、毎日世界の貧しい子どもたちのことを考えてほしいとは言いません。
でも、1年に1日、たった365分の1だけでも、世界の日の当たらない環境で生きている子どもたちのことを考え、手を差し伸べてほしい。
それくらいの心の余裕は、日本人にはあるはずだと信じています。