憲法に基づくキャリア権の理念を広める – 認定NPO法人キャリア権推進ネットワークの諏訪さんにインタビューしました!

キャリア形成の法的基盤となる「キャリア権」の理念を広めるため、オンラインでの勉強会やシンポジウムを展開する「認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク」。ボランティアで運営しながら、第一線で活躍する有識者を招いた質の高い学びの場を提供しています。

団体の活動方針や今後の取り組みについて、理事長の諏訪さんにお話を伺いました。

キャリア権の理念に基づく社会人の学びの場

ー団体の概要について教えてください。

諏訪:私たちのNPOは2013年に設立され、今年の6月総会をもって設立12周年を迎えます。

私たちは、キャリアの自律やキャリア意識の基礎には、憲法に規定された様々なキャリアに関する権利が存在し、それらを統合して体系化すると「キャリア権」という権利が理念的に存在するという考え方に基づいています。

憲法第13条には個人の尊重と幸福追求権、第14条には平等な取り扱い、そして職業選択の自由(第22条)や勤労の権利と義務(第27条)など、働くことを巡って基本的人権と国が果たすべき責務が規定されています。また第26条では教育・学習の権利も基礎づけられています。

私たちは主に社会人を対象に、キャリアの意識を持ち、自立して長い職業生活を自分なりに納得いく形で展開できるような法的基盤と考え方を広めるよう努めています。

一言で言えば、職業を通じて幸福を追求する権利をより多くの人に知ってもらい、その実現に向けた支援の必要性を訴求する活動を行っているものです。

オンラインで展開する多彩な学習機会

ー具体的な活動内容について教えてください。

諏訪:コロナ禍以前はリアルな場所で勉強会を開催していましたが、現在はオンラインで活動しています。

主に2つの分科会があり、1つは「キャリアコロキアム」というキャリアに関する対話の場、もう1つは組織内でのキャリアを考える「キャリアダイナミクス」です。それぞれ各種の報告とそれに基づくグループ討論を行う勉強会を年4-5回程度開催しています。

その他、年次総会での特別講演や、年1回の総合シンポジウムなど、年間で10-12回程度のオンラインイベントを実施しています。

法人・個人合わせて約60の会員がおり、各種イベントに会員は無料、一般参加者は980円から2000円程度で参加できます。年間の延べ参加者数は400-500人程度です。

当NPOは完全なボランティア団体であり、有給スタッフは一切おらず、会費や参加費、寄付などで運営を支えています。会員の方々の献身的な協力により、12年にわたって活動を継続してきました。

ー参加者はどのような方が多いのでしょうか?

諏訪:最近はキャリアコンサルタントの方が増えてきました。その他、企業の人事担当者や社会保険労務士、弁護士、医師、大学教員など、様々な職種の方々が参加されています。キャリアという観点から、それぞれの専門性を活かしながら学び合える場となっています。

第一線の有識者による質の高い学び

ー他の団体にない特徴や、独自の取り組みについて教えてください。

諏訪:完全なボランティア団体ながら、総合シンポジウムには厚生労働省、文部科学省、経済産業省、日本商工会議所、連合などから後援を受け、各方面のすぐれた講演者をお招きし、質の高い学びの場を提供しています。

例えば、働き方改革の中心的担当者や、キャリア支援策を推進してきた労働部門のトップの方、大学教授、人事関係の専門家など、第一線で活躍する方々にご登壇いただいています。

特に政策立案者や実務の最前線で活躍される方々から直接話を聞ける機会は貴重です。参加者からも、「現場の生の声が聞ける」「政策の背景にある考え方が理解できる」といった声をいただいています。

2月に行う総合シンポジウムでは、昨年11月から施行されたフリーランス法について、立法に関わった大学教授や公正取引委員会担当室長、プラットフォーム企業の執行役員、フリーランス団体代表者などをお招きして討論していただきます。

細く長く、着実な活動を目指して

ー今後の展望について教えてください。

諏訪:完全なボランティア団体として、資金面でも人材面でも制約はありますが、細く長く着実に活動を続けていきたいと考えています。

設立当初は「キャリア権って何?」と言われていましたが、最近ではキャリアコンサルタントの国家資格一級の試験にも出題されるなど、徐々に認知が広がってきています。

20歳から65-70歳まで半世紀にわたる職業人生において、グローバル化やAIの台頭など激しい変化に直面する中で、進むべき方向性を見失わないためにもキャリア権の理念は重要です。

企業による人的資本投資も、社員自身が自分事として捉え、納得感を持って取り組むことが成功の鍵となります。

スポーツ基本法では、スポーツを通じて幸福になる権利が前文に記されています。同様に、職業を含む人生全体のキャリアにおいても、一人ひとりが幸せに生きる権利があります。

私たちはこの理念を広めることで、働く人々が前向きに変化に適応し、自分らしいキャリアを築いていけるよう支援できる社会となるため努力していきたいと考えています。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

諏訪:時代の変化は激しいですが、自身のキャリアをしっかりと展開していくために、その法的根拠や国や企業による支援策の理由について、時には立ち止まって考えてみていただければと思います。