フィリピンの児童養護施設や貧困家庭の子どもたちに、ダンスや空手の習い事を無償で提供する教育支援団体「NPO法人アクション」。
JICAや現地政府機関と連携しながら、子どもたちの精神的成長と自立をサポートしています。
社会福祉の専門家であるフィリピン人スタッフとともに、多角的な支援活動を展開する同団体の取り組みについて、山本浩平さんにお話を伺いました。
多岐にわたる支援活動で子どもたちの成長をサポート
ー「NPO法人アクション」ではどのような方を対象にどういった支援を行っていらっしゃいますか？
山本さん：「NPO法人アクション」はフィリピンの児童養護施設や青少年更生施設で保護されている子どもたち、そして貧困家庭の子どもたちを対象に、幅広い支援活動を展開しています。
その中核となるのが、「チカラプロジェクト」と呼ばれるダンスと空手の指導です。
フィリピンの学校には放課後のクラブ活動がなく、習い事をするには費用が必要です。
そこで当団体は経済的な理由で習い事に参加できない子どもたちに、無料でダンスと空手を学ぶ機会を提供しています。
特に児童養護施設の子どもたちは、過去の虐待などのトラウマ的な経験から自己否定的になりやすい傾向がありますが、活動に取り組む時間はそういった経験を忘れられる時間を過ごしてほしいと願っています。
また、ダンスのコンテストや空手の昇級試験などを通じて、子どもたちは努力が成果につながる経験を積み重ね、自己肯定感を高めていきます。
社会福祉の専門家による質の高い支援体制
ー「NPO法人アクション」の強みやアピールポイントについて教えてください。
山本さん：「NPO法人アクション」の特徴は、フィリピン事務局に社会福祉士の資格を持つフィリピン人スタッフを多く採用していることです。
社会福祉を専門的に学んだプロフェッショナルが支援に携わることで、子どもたちにより効果的なプログラムを提供しています。
また、JICAや現地の社会福祉開発省（日本の厚生労働省に相当）との協働も積極的に行っています。
特に、児童養護施設の子どもたちが18歳で施設を出た後、スムーズに社会に適応できるよう、ライフスキルトレーニングの教材開発と研修プログラムを実施しています。
さらに、将来の就労支援として、マッサージ技術の職業訓練や、美容師と協力した美容技術指導なども行っています。
その他、性教育や人身売買防止のためのネットワーク作り、公立小学校での給食支援など、子どもたちの健全な成長を多角的にサポートしています。
17歳の高校生から始まった支援の軌跡
ーこのような活動を始めたきっかけについて教えてください。
山本さん：「NPO法人アクション」の活動は、代表の横田氏が17歳の高校生時代にフィリピンを訪れたことから始まりました。
1991年のピナトゥボ火山噴火の被害によって苦しんでいる児童養護施設があることを知り、支援のため、英語もままならない状態で単身フィリピンに渡りました。
その時に現地の人々の温かい受け入れに感銘を受け、恩返しの想いから当団体の活動を開始。
当初は被災地の修繕工事を中心に、日本人ボランティアを募って活動していましたが、インフラ整備が一段落した後は、子どもたちの精神的な成長をサポートする支援にシフトしていきました。
新たな挑戦：交通安全教育プロジェクト
ー今後新たに取り組んでいきたいとお考えのことや将来のビジョンについて教えてください。
山本さん：今年、当団体では新たに交通安全教育プロジェクトを開始します。
フィリピンは車社会でありながら交通ルールを守らないドライバーが多く、事故の犠牲になる子どもたちや、事故で親を失う子どもたちも少なくありません。
この問題に対処するため、アクションでは、YAMAHA発動機様、HONDA Cars & Motors様、トヨタ自動車様と提携し、交通安全教育を実施する計画です。
さらに今後、多くの企業の参加が見込まれており、より大規模な教育活動を展開していく予定です。
国際協力はアクションから始まる
ーこの記事を読まれた方にメッセージをお願いいたします。
山本さん：「NPO法人アクション」という団体名には、「考える前に、まずは行動してみよう」という想いが込められています。
国際協力に貢献したいと考えている方は多いものの、実際に行動に移せる人は少ないのが現状です。
同団体では、美容師による技術指導など、一見国際協力とは縁遠い職種の方々とも積極的にコラボレーションを行っています。
『成功や失敗を考える前に、まずは一歩を踏み出す勇気を持つこと』
これがアクションの活動理念であり、より多くの方々に国際協力の扉を開く鍵となっています。
「NPO法人アクション」はフィリピンの子どもたちへの支援活動を通じて、より大きな社会貢献を目指しています。
ぜひ寄付や協力を通じて、皆様もこの活動に参加してみませんか。
