中学受験、高校受験、大学受験―。子どもの将来を左右する重要な岐路に、多くの親子が不安や戸惑いを抱えています。従来の受験指導では、集団授業や個別指導、家庭教師など、「教える」という観点からのアプローチが一般的でした。しかし、勉強の仕方が分からない、モチベーションが続かない、親子でぶつかってしまうなど、成績以外の悩みを抱える親子は少なくありません。
そんな中、注目を集めているのが「おうち受験コーチング」です。12年間で4000件以上の家庭教師指導経験を持つ鈴木詩織氏が2019年に創設したこのサービスは、学習科学とコーチングを組み合わせた独自のメソッドで、親子それぞれの成長をサポートしています。受験という「点」ではなく、人生という「線」を見据えたアプローチで、多くの親子から支持を集めています。
「おうち受験コーチング」とは
ー御社の事業について教えてください。
鈴木:おうち受験コーチングでは、中学受験・高校受験・大学受験に向き合う親子のサポートをオンラインで行っています。お子様自身が直接コーチングを受ける場合は小学4年生からですが、保護者の方だけで学んでいただき、お子様に教えていただく形であれば、小学1年生から3年生の方も対象としています。
私たちは単なる受験指導ではなく、お子様一人一人の生き方や、その方にとって勉強がどんな意味や価値があるのかを一緒に考えることから始めています。特に重視しているのは、子どもたち自身が「なぜ学ぶのか」という本質的な問いに向き合うことです。
豊富な経験から見えてきた、子どもが伸びる3つの条件
ー創業のきっかけを詳しく教えてください。
鈴木:私は以前、家庭教師の派遣会社で12年ほど勤務し、学習コンサルタントとして約4000件のご家庭を訪問してきました。その経験の中で、子どもが伸びる条件が明確に見えてきました。
1つ目は、「目的意識」です。同じ時間勉強しても、「とりあえず机に向かう」子と「今日はこれができるようになろう」と目的を持って取り組む子では、結果が大きく異なります。この違いは、その後の学習効果に大きな影響を与えます。
2つ目は、「正しい勉強法」です。多くの子どもたちは、効果的な勉強方法を教わる機会がないまま、自己流で学習を進めています。しかし、学習科学の発展により、どのような方法が効果的で、どのような方法が非効率なのかが明らかになってきています。
3つ目は、「親の関わり方」です。子どもが力を発揮できているご家庭と、そうでないご家庭では、親の関わり方が全く異なることに気づきました。しかし、これは特殊な能力が必要なわけではなく、正しい知識があれば誰でもできることでした。
独自の親子アプローチが生む、驚くべき相乗効果
ー他のコーチング事業との違いを教えてください。
鈴木:最大の特徴は、親子両方へのアプローチを行っている点です。保護者向けのコーチングや、お子様向けのコーチングは増えてきていますが、両方を同時にサポートしている例は、私の知る限り他にはありません。
特にお子様が小学生・中学生のご家庭では、保護者へのアプローチが非常に重要となります。なぜなら、お子様だけ、あるいは保護者だけへのアプローチでは十分な効果が得られないことが多いからです。この時期の学習には必ず親の関わりが発生します。両方を同時にサポートできるという点は、他にはない強力な強みだと自負しています。
さらに、私たちは独自の特徴として、エニアグラムという性格診断を活用しています。お子様を9つの性格タイプに分類し、それぞれの特性に合わせた学習方法や声かけの方法を提案しています。親の経験がそのまま子どもに当てはまる確率は実は81分の1。だからこそ、科学的なアプローチが必要なのです。
受験は通過点、その先の人生を見据えて
ーコーチングを通じて目指すものは何でしょうか。
鈴木:私たちが最も大切にしているのは、「今も未来も幸せになる」という考え方です。ともすれば受験指導は、「今を我慢して、将来のために頑張る」という発想になりがちです。しかし、それでは持続的な成長は望めません。
例えば、社会人になってから伸びる人の特徴として、「打たれ強さ」と「工夫する力」があります。新人は必ず失敗しますが、その後の反応が大きく異なるのです。これらの力は、実は受験勉強を通じて育てることができます。
計画を立て、実行し、うまくいかなければ方法を変えてみる。こういった経験を積み重ねることで、社会に出てからの「伸びしろ」が大きく変わってくるのです。その意味で、受験期の学びは、その後の人生の質を大きく左右すると言えます。
充実のサポート体制
ー具体的なコース内容を教えてください。
鈴木:基本的に最初の3ヶ月で勉強のやり方などをしっかりとインプットし、その後は定期的なコーチングでフォローアップしていく形をとっています。
初期3ヶ月のコースは主に3つあります:
- 親子でじっくり学ぶコース: 親子それぞれが専門のコーチから直接指導を受け、相乗効果を生み出します。
- お子様メインのコース: お子様は直接コーチングを受け、保護者は動画学習を中心に学びます。
- 保護者のみが学ぶコース: 特に小学校低学年のお子様を持つ保護者向けのコースです。
さらに、コーチング以外にも、学習指導の追加や、志望校の出題傾向分析に基づくオーダーメードカリキュラムの作成なども行っています。すべてのコースで、エニアグラムによる性格診断を実施し、お子様の特性に合わせた指導を行います。
これからの展望―すべての子どもに、可能性を
ー今後の目標を教えてください。
鈴木:おうち受験コーチングの認知をさらに広げていきたいと考えています。従来の受験指導とは異なる、第4の選択肢として知っていただければと思います。
特に強調したいのは、「元々学力が低い子」「伸びない子」というのは存在しないということです。これまで4000件以上の親子と関わってきた経験から、それぞれの子どもに合ったやり方と声かけがあれば、誰でも伸びる可能性を持っているということが分かっています。
実際、私たちのサービスを利用された方々からは、「受験後も成長が続いている」「学校でも上位の成績を維持している」といった声を多くいただいています。これは、単なる受験テクニックではなく、本質的な学ぶ力が身についた証だと考えています。
親御さんが受けた教育と現在の教育では大きく異なりますし、親子の性格が異なれば、親の経験が子どもに当てはまる確率は極めて低くなります。だからこそ、専門家のサポートが必要なのです。
最後に―すべての親子に伝えたいこと
鈴木:私たちが最も大切にしているのは、「今も未来も幸せになる」という考え方です。将来のために現在を我慢するのでもなく、現在の楽しみのために将来を台無しにするのでもない。目の前の勉強が自分のためになっていると実感しながら、その延長線上に幸せな未来を見据えていく。
すべての子どもたちには、無限の可能性があります。その可能性を最大限に引き出すために、私たちは親子それぞれに寄り添い、サポートを続けていきたいと考えています。受験は確かに重要な通過点ですが、それ以上に重要なのは、その過程で育む「学ぶ力」と「生きる力」なのです。