小学校のPTAで出会ったお母さんたちが立ち上げたNPO法人レインボーリボン。多文化共生のPTA活動からスタートし、いじめ防止教室や子ども食堂へと活動の幅を広げています。子どもたちの笑顔を守るため、地道に10年間続けてきた取り組みを紹介します。

NPO法人レインボーリボンの活動内容
ーレインボーリボン様はどのような方を対象に、どんな活動をされているのですか?
緒方さん:レインボーリボンは3つの活動の柱があります。1つ目はPTA研修です。さまざまな自治体のPTA研修の講師を請け負い、研修を行っています。
2つ目がいじめ防止教室で、学校の依頼を受けて出向き、いじめ防止教室を実施します。主に小学5年生から中学1年生を対象としていますが、最近は小学1年生から6年生までの全校児童対象の道徳公開授業も行いました。
3つ目が子ども食堂・フードパントリーの運営です。東京都葛飾区で毎週土曜日に活動しており、第1・第3土曜日がフードパントリー、第2・第4土曜日が子ども食堂として運営しています。
いじめ防止教室の活動内容と理念
ーいじめ防止教室ではどのようなプログラムを実施されているのですか?
緒方さん:いじめ防止教室は、私たちが10年前に始めた取り組みです。きっかけは自分たちの子どもが通う中学校での深刻ないじめ事件でした。被害者の子がPTSDになって長期入院する事態を目の当たりにし、「何かできることはないか」と考えました。
まず専門家を招いていじめ防止教室を実施するよう教育委員会に要請しましたが、予算がないと断られました。「なら、私たちがやろう」と決意し、品川区や世田谷区で活動していた専門家のもとへ何度も通い、プログラムを学びました。
現在のプログラムは小学5年生から中学1年生を対象に、3週間かけて行います。特徴は「行動を変える」という実践的なアプローチです。いじめの中の三つの立場—被害者・加害者・傍観者—それぞれが何をすべきかを具体的に学びます。
1週目は「被害者の視点」から子どもたちに「嫌だ」と明確に伝える練習をします。例えば、「それやめて」「触らないで」と言う練習を実際に行い、自分の安全な距離(境界線)を守る権利があることを教え、それを超えられたら「逃げてもいい」と伝えます。
2週目は「加害者の視点」で考える授業です。「いじめとは何か」を子どもたち自身に考えてもらい、具体例を挙げてもらいます。次に小グループに分かれ、模造紙に「加害者の物語」を作り、現在どんないじめをしているのか、なぜそうなったのか(過去)、そしてどうすれば変われるか(未来)を描きます。これにより、加害者にも背景があることや、変わる可能性があることを理解してもらいます。
3週目は「傍観者の役割」です。「見ているだけでも加担している」ことを学び、できることを考えます。
例えば以下のことを意識してもらいます。
・被害者に声をかける
・被害者を一人にしない
・大人に知らせる
・いじめの記録をつける
最後に「アサーティブコミュニケーション」を学びます。自分も相手も大切にする対話の仕方をロールプレイで練習し、実生活で使えるスキルとして身につけます。
このプログラムの特長は、知識だけでなく実際の行動を変えることを目指している点です。子どもたち自身が考え、話し合い、練習することで、学校生活での実践につなげています。
レインボーリボン設立の経緯と多文化共生の始まり
ーレインボーリボンはどのようなきっかけで設立されたのですか?
緒方さん:2006年、小学校のPTAの広報部で活動していた時のことです。メンバーの中にフィリピン人のお母さんがいましたが、彼女は活動に参加してくれませんでした。
この経験から私たちは自分たちの偏見に気づき、「どんな背景を持つ親子も共に過ごせる場所を作りたい」という思いで活動を始めました。外国人の保護者が学校の連絡事項を理解できずに困っている現状も知り、多文化共生のPTA活動として発展。2014年にNPO法人化し、今日の三本柱の活動につながっています。
PTAの実態と課題
ーPTAはどのような役割を果たしているのでしょうか?
緒方さん:PTAは一般的に「学校を支える親の組織」というイメージが強いかもしれません。これまでは子どもが入学すると親は自動的にPTAに加入させられ、活動に参加することが半ば強制的でした。
多くの保護者にとって、時代に合わない活動が毎年繰り返されるPTAは負担に感じられています。近年は「強制参加はおかしい」「人権侵害だ」という声も高まり、任意参加の流れになっていますが、そうすると参加者が減少し、PTA自体が成り立たなくなるという課題もあるのです。
これらの課題を解決するためにPTAイノベーションの活動を行っています。
従来のPTAの主な活動は、学校行事での来賓対応や、清掃活動などの学校支援です。これらの活動の意義が理解できないまま、半強制的に参加させられる仕組みもモチベーションを下げる一因となっています
レインボーリボンの今後のビジョンと課題
ー今後の展望についてお聞かせください。
緒方さん:実は当初は10年で活動を終える予定でしたが、2014年のNPO法人化から10年が経った今、子ども食堂やフードパントリーが地域に根付き、多くの人が楽しみにしてくれているため、続けることにしています。
課題はいじめ防止プログラムの継続です。現在実施できるのは私一人だけなので、若いスタッフへの引き継ぎを模索しています。子ども食堂のボランティアや社会人の方で、いじめ防止教室に関心のある方を募集しています。この取り組みを次世代に継承できれば嬉しいです。
参加を検討している方へのメッセージ
ー活動に興味を持った方へのメッセージをお願いします。
緒方さん:子ども食堂は「支援する・される」という関係ではなく、一緒に楽しむ場です。まずはお近くの子ども食堂に気軽に遊びに来てみてください。
子どもたちの成長を見守りたい方、地域の子どもたちと楽しい時間を過ごしたい方は、ぜひボランティアとしてご参加ください。特別なスキルは必要ありません。子どもが好きで、温かい気持ちがあれば十分です。
いじめ防止に関心のある方、特に教育や心理学に興味のある方には、いじめ防止教室を見学していただきたいです。この活動を共に進め、次世代に引き継いでくださる仲間を求めています。
子ども食堂やフードパントリーでは、食材提供、調理、子どもたちと遊ぶなど、さまざまな形で参加できます。小さな一歩から始めて、子どもたちの笑顔に触れる喜びを一緒に分かち合いましょう。まずはメールでお問い合わせください。皆さんの参加をお待ちしています。