日本の学校に通う女子学生の約10%が、経済的な理由で生理用品を購入できないと言われています。NPO法人レッドボックスジャパンは、この「生理の貧困」という社会課題に向き合い、全国535の学校に生理用品を提供する支援活動を展開しています。今回は、同法人の取り組みや、すべての学生が安心して学べる環境づくりへの思いについて詳しくお話を伺いました。
活動概要と設立の経緯
ーまず、NPO法人レッドボックスジャパンの活動概要について教えていただけますでしょうか。
尾熊さん:私たちは、日本の学校に通うすべての女子学生が安心して学習できることをサポートするチャリティー団体です。イギリス発祥の団体の日本支部として、小学生から大学生まで、専門学校や特別支援学校を含むすべての学校の学生を対象に活動しています。活動内容はシンプルで、赤い箱に生理用品を入れて学校に寄付するというものです。
元々はイギリスで2017年に始まった活動ですが、2020年にイギリスでは生理用品が国の予算で無償化され、本国での活動は終了しました。現在は北米や欧州を中心に支部が展開しており、アジアでは日本のみで活動しています。日本支部は2019年の設立から7年目を迎え、着実に活動を広げています。
設立の背景
ー設立に至った経緯について詳しくお聞かせください。
尾熊さん:大学卒業後、FemTech(女性の健康課題をテクノロジーで解決する産業)の調査中に、先進国イギリスでも約10%の学生が経済的な理由で生理用品を購入できないという現実を知りました。当時の日本ではこの問題についての議論さえありませんでしたが、同様の課題が存在すると考え、支援活動を開始しました。
現在では535の学校・公共施設に支援を広げ、特にコロナ禍以降、問題への認識も高まっています。教育委員会や自治体からの依頼も増え、市や県単位での導入も実現しています。
レッドボックスジャパンの4つの特徴
ー団体の特徴的な取り組みについて教えてください。
尾熊さん:レッドボックスジャパンの取り組みには主に以下4つがあります。
1. シンプルで明確な支援モデル
赤い箱に生理用品を入れて学校に設置するという、シンプルな仕組みを採用しています。単純な方法ながら、多くの女子学生の学習機会を支えています。
2. 教育機関との強固な連携
個別の学校への支援にとどまらず、教育委員会や自治体とも協力関係を構築。その結果、市や県単位での一括導入を実現し、より多くの学生への効率的な支援を可能にしています。
3. 啓発と教育の推進
生理用品の提供だけでなく、生理に関する正しい知識の普及や、ジェンダーに関する理解促進にも力を入れています。特に、学生が主体的に学び、考える機会を創出している点は、私たちの誇りです。
4. 持続可能な支援体制
寄付だけに依存せず、独自の収益事業も開発中です。これにより、安定的で継続的な支援体制の確立を目指しています。
今後の展望と課題
ー今後の事業展開についてのビジョンをお聞かせください。
尾熊さん:一時的なブームで終わらせることなく、継続的な支援体制の構築を目指しています。最近では学生からジェンダーや女性活躍についての問い合わせが増えており、若い世代の意識の高まりを実感しています。
今後は支援の継続性を確保しながら、学生が自身の体について学び、将来のキャリアにも活かせる支援を展開していく予定です。また、新たな収益事業として、最新の産業技術やキャリア形成に関する機会を学生に無償提供する計画も進めています。
読者へのメッセージ
ー最後に、活動に関心を持たれた方へメッセージをお願いします。
尾熊さん:まずはこのような問題があることを知っていただくことが第一歩です。生理の貧困は、決して他人事ではありません。若い世代の学びの機会を奪う可能性のある、現代社会の重要な課題の一つです。
私たちは、すべての学生が安心して学校生活を送れる環境づくりを目指しています。この活動に共感していただける方は、ぜひSNSでの発信や周囲との対話を通じて、問題の認知度向上にご協力ください。企業や団体の方々には、学生支援の一環として本活動へのご参加もご検討いただければ幸いです。
生理の貧困解決は、一朝一夕には実現できない課題です。しかし、一人ひとりの関心と理解が、確実に社会を変える力となります。これからも多くの方々と共に、すべての学生が平等に学べる社会の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。