従来の受験対策や学習塾とは一線を画し、ゲームを活用した新しい学びの場を創造する「シン・スクール」。デジタルネイティブ世代に向けた革新的な教育アプローチと、AIやデジタルツールを活用した学びの可能性について、代表の吉澤氏に詳しくお話を伺いました。
ゲームを通じた学びの可能性
ー御校の特徴的な教育アプローチについて、詳しくお聞かせください!
吉澤氏:私たちはゲームが好きな子どもたちを中心に受け入れています。特にデジタルに強く、個性的な子どもたちが多く集まっています。学校が古すぎて排除されがちな子たち、デジタルと個性が強い子たちが私たちの教室に来ています。
私たちの最大の特徴は、特定の価値観や目標を押し付けないことです。「これを習得すれば幸せになれる」「この学校に合格すれば良い」といった指導は一切行いません。代わりに、子どもたちが自由に挑戦できる環境と場を提供し、やってみたいことが見つかった時に、それをサポートする形を取っています。
デジタル世界における新しい教育の形
ー具体的にどのような活動を通じて学びを提供されているのでしょうか?
吉澤氏:私たちは最新のゲーム機器を完備しています。VRのメタクエスト2、PS5を4台、複数台のPC、そして古い機種まで、あらゆるゲームが体験できる環境を整えています。週に1-2本のペースで新しいゲームを購入し、常に最新のコンテンツを提供しています。
私自身、以前はゲーム開発やカジノ関連の仕事、ファミ通での経験もあり、ゲーム業界との深い関わりがあります。その経験を活かし、学習に役立つ面白いゲームを選定し、子どもたちや保護者に提案しています。
学びと遊びの融合
ーゲームを通じた具体的な学習効果について教えていただけますか?
吉澤氏:例えばゼルダの伝説のような作品は、問題解決能力や創造的思考を育むのに最適です。マインクラフトでは創造性を育み、シミュレーションゲームでは実社会の仕組みを学べます。
特に重要なのは、これらが単なる娯楽ではなく、実践的な学びにつながっているということです。例えば、都市を作るのシミュレーションゲームを通じて、実際のエネルギー問題について考えたり、環境問題への理解を深めたりすることができます。
オンラインとオフラインの融合
ーオンラインとオフラインの両方で指導されているそうですが、それぞれの特徴を教えていただけますか?
吉澤氏:オンラインでは、マインクラフトのRealms(レルムズ)サーバーを活用し、生徒たちが共同で村づくりを行っています。Zoomを使って会話しながら、まちづくりの計画を立て、協力して実現していきます。また、フォートナイトなどのeスポーツ系ゲームでは、チームで戦略を立て、失敗から学ぶ機会を提供しています。
リアルな場では、2週間後に「ゲームキャンプ」を実施予定(取材当時)です。森の中で大画面を設置してゲームをプレイするだけでなく、ゲームで体験したことを実際に試してみます。例えば、魚を釣って調理したり、石窯を作ってピザを焼いたり、火打ち石で火をおこしたりします。ゲームの世界で経験したことをリアルで体験することで、より深い学びにつながっています。
他機関との連携と将来展望
ー今後の展望についてお聞かせください!
吉澤氏:私たちは、「スキルよりスキを磨こう」をモットーに掲げています。このアプローチには3つの重要な利点があります。
- 自分だけの独自の強みを作れること
- メンタル面での強さを育めること
- AI時代において、人間にしかできない仕事ができる人材の育成
また、他の教育機関との連携も積極的に進めています。単独の塾として完結するのではなく、それぞれの強みを活かしたプラットフォームとしての機能を目指しています。例えば、オンライン英語塾や他のフリースクールと連携し、子どもたちに多様な学びの機会を提供しています。
デジタル時代における新しい学びのスタイル
ー御校ならではの特徴的な取り組みについて、もう少し詳しくお聞かせください!
吉澤氏:私たちの強みは、コミュニケーション能力の自然な育成にあります。同じ興味を持つ仲間と一緒にゲームを楽しみながら、自然とコミュニケーション能力が身についていきます。「スキルを身につけなければ」という意識的な努力よりも、好きなことを通じた自然な学びの方が、はるかに効果的だと考えています。
特に、ADHDやASDの特性を持つお子さんたちにとって、ゲームは相性が良いツールとなっています。ただし、私たちはそういった特性で子どもたちを区分けすることはありません。むしろ、そういった特性は、デジタル時代においては強みになり得ると考えています。
これからの時代に求められる教育とは
ーAI時代における教育の在り方について、お考えをお聞かせください!
吉澤氏:AI時代において、単なる知識やスキルの習得は、AIに取って代わられる可能性が高いです。そのため、私たちは「意志を持った仕事」、つまり人間にしかできない創造的な仕事ができる人材の育成を目指しています。
例えば、このTシャツもAI(ChatGPT)を使って作ったものですが、それを使いこなすのは人間です。AIやデジタルツールを使いこなすための基礎となる、自分の興味や関心を見つけることが、これからの時代には重要になってきます。
保護者の方々へのメッセージ
ー最後に、保護者の方々へメッセージをお願いします!
吉澤氏:現代は、大人と子どもの価値観の差が非常に大きくなっています。情報の取得方法も異なり、価値観も大きく変化しています。そのため、親の価値観や従来の教育観を押し付けることは、逆効果になる可能性があります。
子どもたちの声に耳を傾け、彼らが必要としている環境を整えることが重要です。今の子どもたちが大人になる頃には、現在の常識が通用しなくなっている可能性が高いです。そのため、最新の情報に触れ、子どもたち自身が必要とする環境を提供することが、私たち大人の役割だと考えています。
これからの時代を生きる子どもたちにとって、本当に必要な学びとは何か。私たちはその問いに対する一つの答えとして、ゲームを通じた新しい教育の形を提案しています。従来の価値観にとらわれず、子どもたち一人一人の可能性を最大限に引き出せる場所として、これからも進化を続けていきたいと考えています。