子どもの可能性を広げる暗算教育 – 『そろばんマイスタースクール』の独自メソッド

デジタル全盛の現代において、そろばんという伝統的な計算道具がなぜ依然として多くの子どもたちに支持されているのでしょうか。「頭の中にそろばんを持つ」暗算力は、単なる計算スキルを超えた価値を持ち、子どもたちの未来の可能性を広げていきます。

愛知県知立市にある『そろばんマイスタースクール』は、そろばんを通じて計算力だけでなく「人間力」を育むという独自の教育方針を持っています。教室を主宰する遠山智士先生は、「全ての生徒に暗算力を身につけてもらうことで、学校の勉強や日常生活で活かせる力を育てたい」と語ります。

幼稚園児から大学生まで幅広い年齢層の生徒が通うこの教室では、そろばんの級よりも暗算の級の方が2〜3つ上になるのが平均的だといいます。これは他のそろばん教室とは一線を画す特徴です。さらに、生徒一人ひとりのペースに合わせた個別指導や、子どもの「頑張りたい」気持ちを大切にしたフリーコース制度など、独自の取り組みで子どもたちの成長をサポートしています。

今回は、そんな『そろばんマイスタースクール』の遠山先生にインタビューし、そろばん学習の魅力と可能性について深く掘り下げてみました。

「頭の中の計算機」を育てる – そろばんマイスタースクールの教育理念

ー遠山先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まず簡単に、どういった方を対象にしているそろばん教室なのか、そしてどういった指導を行っているのか、『そろばんマイスタースクール』の概要についてお伺いできますか?

遠山 智士代表(以下、敬称略):対象としては、幼稚園児から現在は大学生までの生徒が通ってくれています。そろばん教室としてのメインは暗算の指導に力を入れていて、全ての生徒に何の計算道具もなく、頭の中で自分の力だけで計算できる能力を身につけてもらうことを重点的に指導しています。

好きを伝える使命感 – 遠山先生がそろばん教室を開いた理由

ーこちらのそろばんスクールを開かれた経緯や、きっかけを是非お伺いさせてください。

遠山:子供の頃から自分もずっとそろばんを習っていて好きだったので、好きなそろばんを子供たちに伝えたいというのが、まず一番の理由ですね。子供達にそろばんの良さを伝えることができれば、子供の親やおじいちゃんおばあちゃんといった幅広い世代にそろばんの良さが伝わっていくのかなと思っています。

ー遠山先生は子供の頃からそろばんをされていたということですが、そろばんを好きになったきっかけや、自分の人生に良い影響があったというエピソードがありましたら、ぜひお伺いしても良いですか?

遠山:そろばんは10級から十段まで検定試験があるため、1つ1つ合格していくことで自分が上達しているということを実感しやすいと思います。また、検定試験だけでなく、競技大会にも参加することで、もっと上手になりたい!という気持ちが強くなっていきました。検定試験、競技大会を通して上達を実感できることだけでなく、友達と一緒に練習することや、みんなで県外へ遠征するなど、様々なことにチャレンジできる環境があったからこそ、どんどんそろばん好きになっていったのだと思います。

他のそろばん教室との違い – 圧倒的な暗算力の習得

ー他にもそろばん教室はたくさんありますが、他にはない『そろばんマイスタースクール』ならではのアピールポイントがありましたら、ぜひお伺いさせてください。

遠山:やはり一番は暗算力を身につけてもらうということを重視しています。もちろん最初はそろばんをメインにそろばんの使い方を覚えてから暗算に入っていくのですが、大体みんなそろばんが4級や3級くらいになると、暗算は1級とか段位とか、暗算の方が2つ3つは上のレベルになっているというのが大きな特徴かなと思います。

日本のそろばん教室の7割8割は暗算よりそろばんの級が上というところが多いのですが、うちの教室では暗算の方が上というのが、平均的な状況になっています。

ー暗算に力を入れている理由として、何か遠山先生の想いはございますか?

遠山:やはりそろばんが無いと計算できないのでは、正直あまり意味がないかなと思うんです。日常生活でそろばんを持ち歩くことはないので、「それなら電卓でいいじゃん」とか「スマホでいいじゃん」となってしまいます。自分の脳力で計算できるというのは、学校の勉強やテスト、入試の際にも、頭の中のそろばんを持ち込めるということなので、そういった脳力を生徒達全員に身につけてもらうことで、大きくなった時に勉強や日常生活の中でも活かすことができます。「暗算ができなかったらそろばんを習う必要はない」くらいに思っているので、暗算力の習得を重視しています。

ー暗算がすごくできる子は、算数や数学に限らずほとんどの教科の成績が良い印象があるのですが、そろばんが他の分野にも良い影響を与えているとお感じになりますか?

遠山:それは本当にあると思います。私の教室も今年(2025年)4月で12年目に入ったのですが、一番最初に習いに来てくれた子がちょうど今大学に入り始めているところで、卒業生が「大学生になったよ」と報告に来てくれるのですが、国公立大学に進学しているというケースがとても多いです。

そろばんをやると頭が良くなるというのはよく言われることですが、その理由としては、暗算をやることによる脳の活性化ということももちろんありますし、効率的な学習にも繋がります。例えば、そろばんをやっていない子が勉強すると2時間かかる内容が、そろばんを習って暗算ができる子だと1時間で覚えられるとか、頭の中の記憶する動作も早くできるようになったりします。

また、そろばんは普通の習い事として取り組むと週に1時間という場合が多いのですが、暗算ができる子は相当な時間を自習・練習しているので、机に向かうという習慣が小さい頃から身についています。高校生や大学生達にそろばんの良さが勉強に繋がっている部分は何かと聞くと、「勉強が苦じゃない。何時間もそろばん練習してきたからこそ、勉強していても普通に机に向かっていても全然平気」という声もよく聞きます。

異学年が学び合う教室 – そろばんを通じて育まれる計算力以外の力

ー生徒さん達に指導する際に特に意識していることや方針などがあれば、ぜひお伺いさせてください。

遠山:意識している点としては、幼稚園児から大学生まで通ってくれているので、学校の授業のように皆に一斉に教えるというよりは、一人ひとりに個別で指導をしています。わからない子がいれば分かるまで教えますし、わからないまま次に進むということはないので、「難しくなっていってもうできません」という状況が生まれないように気をつけています。

その子一人ひとりのペースに合わせていますので、早く進む子もいれば、ゆっくり進む子もいますが、生徒一人ひとりに合わせたペースでの指導というのを最も意識しています。

ーホームページを拝見させていただいたのですが、「そろばんで人間力を高める」というワードがあったかと思います。そちらを少し遠山先生の方から説明していただいても良いですか?

遠山:そろばんで人間力向上というと大げさに聞こえるかもしれません。一般的には計算力や暗算力というのが、そろばんで得られる能力として大きいことは間違いありません。しかし、例えば次の級に受かりたいとか、大会で勝ちたいという積極性であったり、子どもの頃から検定試験、競技大会と多くの「本番」を経験できるということも、そろばんの魅力の一つだと思います。

また、異なる学年の子達が一緒に練習する機会が多いんですね。低学年の生徒が高学年や中高生と一緒に練習することができるので、異なる学年の子と同じ場で同じことをするという協調性も身につきます。これは、子どもの習い事としてとても珍しいことだと思うので、そういう場で日々一緒に過ごすというのは小さい子にとっても大きな子にとっても非常に貴重な時間だと思います。

さらに、先生に丸つけをしてもらう時に「お願いします」ときちんと言ったり、終わったら「ありがとうございます」と伝えるなど、言葉遣いや礼儀を大切にしています。これは先生に対してだけでなく、生徒同士でも交換採点をする時もあるのですが、「お願いします」「ありがとうございます」という言葉遣いを心がけてもらうようにしています。

「今日は3時間やりたい!」を実現 – 子どもの意欲を最大限に引き出すフリーコース

提供されているコースやプランについて、簡単にご説明いただいてもよろしいですか?

遠山:コースは2種類ありまして、「週に3時間までのコース」と、「フリーコース」があります。

週に3時間までのコースは予め何曜日の何時に来るかというのを決めていただくのですが、フリーコースの場合は本当に自由な形で通っていただくことができます。毎日来る子もいますし、平日でも2時間3時間という風にたくさん練習する子もいます。

ーこれはどちらの比率が多いのですか?

遠山:8割くらいがフリーコースを選んでくれていますね。

ーフリーコースって結構珍しくありませんか?あまり聞かないような気がします。

遠山:週に何時間ときっちり分けている所が多いかなとは思うのですが、やはり「頑張りたい」という気持ちを応援したいのです。子供が「今日はたくさんやりたい!」という時に、予め時間を決めていると「今日2時間やりたいのに1時間で終わらないといけない」ということになってしまいます。そのようなことがないように、子供が頑張りたい気持ちをそのまま発揮してもらうためには、このフリーコースが必要だと考えて提供しています。

目標を自分で掲げる力 – そろばん教育が育む自律心と問題解決能力

※生徒さんの声から一部抜粋

今後、より強化していきたいところや、生徒たちにどのように成長してもらいたいと思っていますか。

遠山:強化していきたい点としては、「生徒達に目標を自分で立てられる人になってほしい」と思っています。そろばんは級が細かく設定されているので、とても目標が立てやすいと思うんです。例えば、10級に受かったら次は9級に向けて頑張ろうというのも一つの目標ですし、検定試験もそろばんの検定だけでなく、暗算検定やフラッシュ暗算の検定と3種類うちの教室では受験してもらっていますので、どんどん自分で目標を設定できます。

先生から「次の目標はこれだよ」というのではなく、自分で目標を考えて、その目標を達成するためにどう練習していったらいいのかを生徒自身に考えてもらうことで、目標達成の喜びや、次はどのように取り組めば良いのか、上手くいかなかった時は何が問題だったのかなどを子供達に考えてもらうようにしています。

それができることによって、将来大きくなった時に、計算力だけではない部分でも能力を活かせるのではないかと思っているので、全ての生徒に自分で考えて行動できる力を身につけてほしいと思っています。

「そろばんは楽しい!」- まずは体験レッスンで実感してみませんか?

ー最後に、『そろばんマイスタースクール』に入会を考えていらっしゃる保護者の方やお子様達に、ぜひ遠山先生からメッセージをお願いします!

遠山:そろばんを「勉強」と考えてしまう方もいると思いますが、小さいお子さんたちは一種の遊びやゲーム感覚で取り組んでいる子が多いです。何時間でも自分で頑張ろうとなってくれる子がいるので、「そろばんは楽しいんだよ!」ということを伝えたいですね。まずは興味があれば、一度体験に来てみてくださいというのをお伝えしたいです。

体験レッスンはマンツーマンで行っていますので、お子さんにそろばんを触ってもらうだけでなく、教室の方針も伝えることができますし、お父さんやお母さんからも質問を受け付けることもできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!