北海道帯広市を拠点に活動するNPO法人地域子育てネットすくさぽ。無料の対面学習支援から、オンラインを活用した不登校支援、発達障害児童向けの放課後等デイサービスまで、多角的な支援活動を展開しています。地域全体で子どもたちの成長を支える同法人の取り組みと、人口減少時代における新しいコミュニティづくりへの挑戦について代表の大澤さんにインタビューしました!
多岐にわたる支援事業で地域の子どもたちの成長をサポート
ー主な事業内容についてお聞かせください。
大澤さん:私たちは主に小中高校生を対象として、4つの事業を展開しています。1点目の無料対面学習支援は、年間20回以上実施している取り組みです。この活動では、小中学生が学習者として参加し、高校生が支援する側として活動します。さらに、地域の大人ボランティアがこの活動全体をサポートする形で運営しています。
2点目は帯広市教育委員会のメタバース空間を使ったオンライン不登校支援事業「ひろびろチョイス」の学習支援部門の事業委託を受けています。このプラットフォームでは、不登校の児童生徒が集い、希望者には1対1での学習支援も行っています。3点目は発達障害のある子どもたちを対象とした放課後等デイサービス、そして4点目は昨年度から進めている新規事業として、不登校児童・生徒向けのリアルな居場所づくりに取り組んでいます。
きめ細やかな支援体制で子どもたち一人ひとりに寄り添う
ー具体的な運営状況についてお聞かせください。
大澤さん:無料対面学習支援については、帯広市、音更町、幕別町の3市町村の全小中学校の生徒に案内を配布しています。この取り組みは着実に広がりを見せており、ここ4年間で登録者は50名を超え、毎回の活動には25名前後の生徒が参加しています。
放課後等デイサービスは火曜日から土曜日までの週5日で運営しています。具体的な時間帯としては、午前が10時15分から12時15分まで、午後は14時30分から17時30分までとなっています。午前中は主に不登校の子どもたちが利用しており、一人ひとりの状況に応じて、好きな活動や学習支援を行っています。中には不安感が強く、保護者から離れられない子どももいますので、まずは保護者とスタッフが一緒に活動しながら、徐時的に信頼関係を築いていくようにしています。
午後の活動では、余暇活動に加えて、中学3年生までの子どもたちを対象に、社会性を育む取り組みも行っており、例えば、年に2回程度、子どもたち自身が企画運営する食堂イベントを開催し、地域の方々をお招きしています。このような実践的な活動を通じて、社会との接点を少しずつ広げていけるよう支援しています。
継続的な支援を目指してNPO法人化へ
ー法人化されたきっかけについてお聞かせください。
大澤さん:私自身は16年間学習塾講師として活動してきた経験があります。学習支援自体は10年ほど前から小規模な形で始めていましたが、当初は近隣の小学校の生徒3、4人程度を対象とした限定的な活動でした。その後、活動の重要性と社会的なニーズを実感し、4-5年前にNPO法人格を取得して現在の規模にまで発展させました。
不登校の子どもたちや発達障害のある子どもたちに関わる活動は、個人の都合で途中で断ち切れるようなものであってはならないと考えています。また、法人化を決意した時期がちょうどコロナ禍でオンラインツールが普及し始めた時期と重なったのですが、オンラインツールを効果的に活用することで、これまで解決が難しかった社会課題にもアプローチできるのではないかと考えました。より確かな運営基盤を持って、持続的な活動を展開していきたいという思いから法人化を決意したというのが経緯でありきっかけです。
世代を超えたネットワークが生み出す支援の可能性
ー御社の強みについてお聞かせください。
大澤さん:私たちの最大の特徴は、小学生から70代手前までの幅広い年代の方々が、ボランティアやスタッフとして活動に関わっていることです。特に高校生ボランティアは毎年35名程度が継続的に登録してくれており、大きな力となっています。
さらに、オンラインツールを活用することで、高校生たちが大学進学後も活動に関わり続けることができる環境を整えています。若いうちから社会課題に関心を持ち、その問題意識を持続的に育んでいくことで、将来的に社会人として活躍する際にも、何らかの形で私たちの活動に協力してもらえる―そういった長期的な視点での関係性構築が、私たちの活動の大きな強みとなっています。
安心して話せる環境づくりを重視
ー生徒さんと関わる際に意識されているポイントについて教えてください。
大澤さん:不登校の子どもたちや発達障害のある子どもたちとの関わりにおいて、最も重視しているのは「言いづらいことが言える空気づくり」です。そのために、私たちスタッフ側が包み隠さずオープンに話すようにしています。
例えば、学校でトラブルがあった場合など、生徒さん自身が話しづらいと感じる可能性が高い内容については、むしろこちらから積極的に話題として取り上げることもあります。「学校でも大変だったでしょう」といった形で、あえて触れにくい話題に踏み込むことで、「ここなら話してもいいんだ」という安心感を持ってもらえるよう心がけています。
特に発達障害のある子どもたちの場合、午前中の活動では学習面での支援も行いますが、通常の学習指導とは異なるアプローチを取っています。例えば、右から左へ文字を書き写すことが困難な場合もあるため、そういった基礎的な能力の向上に焦点を当てたトレーニングを行うなど、一人ひとりの特性に合わせた支援を心がけています。
このように、生徒さんたちが「自分のペースで安心して過ごせる場所」を提供することを大切にしながら、それぞれの課題や目標に応じた支援を行っています。腫れ物に触るような接し方ではなく、率直でオープンなコミュニケーションを通じて、信頼関係を築いていくことを心がけています。
地域格差のない教育環境の実現を目指して
ー今後の展開についてお聞かせください。
大澤さん:オンライン事業に対する社会的なニーズは、今後さらに高まっていくと実感しています。実際に講師募集をすると、わずか4日ほどで全国から5名程度の応募があり、この分野への関心の高さを実感しています。現在特に注力しているのは、教員志望の大学生に実践的な経験の場として私たちの活動に参画してもらえるネットワークづくりです。
北海道の地域特性として、15万人規模の都市が5つほど点在していますが、その周辺には社会的資源が十分でない小規模自治体が多く存在します。このような地域間格差を解消し、居住地域に関係なく質の高い教育支援を受けられる環境づくりが、私たちの重要なテーマとなっています。その実現に向けた基礎づくりを、今年から段階的に進めていく予定です。
すべての子どもたちが輝ける地域社会の実現を目指して
ー最後に、記事を読まれている方々へメッセージをお願いいたします。
大澤さん:私たちは子どもたちへの支援活動を行っていますが、その根底には「人口減少時代におけるより良いコミュニティづくり」という大きなテーマが存在しています。「どのようなコミュニティであれば、人々がそこで暮らし続けたいと思えるのか」―この問いに向き合う中で、未来を託す子どもたちへの支援が非常に重要であると考えています。
私たちは求人でも「社会課題を一緒に解決したい人と働きたい」という言葉を掲げています。これは単なる仕事の募集ではなく、地域の未来を共に創っていける仲間との出会いを求めているからです。
お仕事として参加するにせよ、ボランティアとして関わるにせよ、社会課題の解決に向けて一緒に熱意を持って取り組んでいける方々との出会いを心待ちにしています。子どもたちの笑顔のために、そして私たちの地域の未来のために、皆様のお力をお貸しいただけますと幸いです。
地域全体で子どもたちを支え、育んでいく―そんな温かいコミュニティづくりに、ぜひ皆様のお力添えをいただければと思います。