“普通”から自由になる学び舎 ─ TDU-雫穿大学が25年かけて築いてきた “自分から始まる” 教育

“レールから外れた”と感じている若者たちへ向けて、新しい一歩を踏み出すきっかけを提供し続けているTDU-雫穿大学。約30種類のプロジェクトや講座があり、学生自らが新しい講座を立ち上げることもできる柔軟なカリキュラムが特徴です。全国から集まる18歳以上の学生たちは、対面とオンラインを組み合わせながら、自分らしい生き方を模索しています。今回はTDU-雫穿大学の特徴や設立の経緯などについて創設者の朝倉さんにインタビューしました!

TDU-雫穿大学の理念と特徴

ーTDU-雫穿大学の概要と、どのような方を対象としているのかについて教えてください。

朝倉さん:私共のTDU-雫穿大学は18歳以上を対象としており、年齢の上限は設けていません。不登校や引きこもりなど、何らかの生きづらさを経験した若者が自分の生き方を見つける、あるいは模索する場所として機能しています。

入学の重要な条件として、ご本人の意思を大切にしています。ご家族からの要望だけでなく、実際に来校して私共の場所や活動を知った上で、ご本人が入学を希望することを必ず確認させていただいています。

設立の経緯と25年の歩み

ーTDU-雫穿大学を立ち上げられた経緯やきっかけについてお聞かせください。

朝倉さん:前身から数えて25年が経ちました。1999年当時、日本社会には小中高大から就職というレールのような道筋があり、不登校や引きこもりを経験すると、そのレールから外れてしまうことになります。多くの若者が「自分はレールから外れている」という思いを抱え、どう生きていけばよいのか悩んでいました。

しかし、私たちは「生きていけない」ということはないと考えています。一人一人が自分らしいコミュニケーションの方法を見つけ、関心のあることを深め、スキルを身につけていけば、必ず自分に合った生き方ができるはずです。そういった試行錯誤ができる場所が非常に限られていたため、若い人たちと共に場を作ることにしました。

TDU-雫穿大学の独自性とアプローチ

ーTDU-雫穿大学の特徴やアピールポイントを教えて下さい。

朝倉さん:最大の特徴は、「自分から始まる」という考え方を大切にしているところです。一般的な日本の教育機関では、学校や職場という既存の枠組みがあり、個人がそこに自分を合わせていくというアプローチが主流です。しかし、私共では逆の発想で、まずその人という存在があり、その人が望むこと、その人に合うやり方から始めていきます。

その人その人の現在の状況に合わせて、人間関係を築いたり、自分の関心のあるものを見つけたりと、自分らしい生き方を作る一歩一歩を踏み出していくことが可能な環境を提供しています。

学生との関わり方

ー生徒さんと接するときに意識しているポイントを教えて下さい。

朝倉さん:私たちが最も大切にしているのは、個々の学生の主体性を尊重することです。具体的には、私たち教職員が持っている価値観で学生一人一人を判断したり、決めつけたりしないということを非常に重要視しています。

まず、その学生が今何を感じているのか、どのような思いを持っているのかということを感じ取ることから関係作りを始めています。年齢も背景も様々な学生がいる中で、一人一人の個性や状況を理解し、それぞれに合った関係性を築いていくことを心がけています。

柔軟な学習システムと独自のカリキュラム

ー実際の学習内容や受講の仕組みについて詳しく教えてください。

朝倉さん:私共には約30種類のプロジェクトや講座があり、学生は自分の希望に応じて参加することができます。特徴的なのは、既存の講座にない内容でも、3人以上の賛同者が集まれば新しい講座やプロジェクトを立ち上げることが可能なことです。また、2人や1人の場合でも、個別プロジェクトとして実施することができます。

通学方法も多様で、新宿区にある校舎は月曜日から金曜日まで朝10時から夕方6時まで開校しています。また、遠方の学生向けにZoomでの参加も可能で、例えば岐阜県在住の学生は基本的にZoomで参加し、月に1回数日間東京に来て対面での活動に参加するなど、個々の状況に応じた柔軟な参加形態を実現しています。

新たな取り組みと今後のビジョン

ー今後の展望や新しい取り組みについて教えてください。

朝倉さん:近年、不登校の子どもたちが増加しており、文部科学省の統計によると小中学校で35万人に上り、11年間増加し続けています。フリースクールという選択肢もありますが、実際にフリースクールに通っている子どもたちは1割にも満たず、ほとんどが家庭にいる状況です。

そこで私たちは最近、家庭を拠点としたホームベースエデュケーションのネットワークを開始しました。これは、家庭を基盤としながら、地域の体育館や図書館、劇場などの社会的リソースを活用し、子どもたちの関心に応じて様々な出会いや学びの機会を提供するプロジェクトです。現在、東京、長野、仙台を拠点に展開しています。

メッセージ

ー最後に、TDU-雫穿大学への入学を検討されている方へメッセージをお願いします。

朝倉さん:現代社会では多くの方が生きづらさを感じており、自分が劣っているのではないか、自分が至らないのではないかと思い悩む若者が大勢います。しかし、生きづらさを感じることは決して個人の問題ではありません。

日本社会には「普通の生き方」というイメージが根強くありますが、それだけが正解ではありません。あなたに合った生き方を作っていくことは可能です。自分とは何者か、何を感じ、どう生きたいのか、自分に合った人間関係とは何か—そういった問いから始めて、一緒に考えていきましょう。諦めていたことを諦めずに生きていける方法を、共に見つけていきたいと思います。