教育の現場では、グローバル化やデジタル化の波を受け、新しい学びの形が求められています。そんな中、伝統的な「そろばん」と国際言語「英語」を組み合わせた独自の教育プログラムを展開する『トモエMIアカデミー』が注目を集めています。
級取得を目標とする従来のそろばん教室とは一線を画し、子どもたちの自己肯定感や多様な知性を育む同校の教育理念は、これからの時代を生き抜く力を養うための新たなアプローチとして評価されています。「百玉そろばん」を使った幼児向けの数概念学習から、13桁までの数を英語で読み上げる高度な計算まで、子どもの成長に合わせた段階的なカリキュラムを提供しています。
今回は所長である藤本トモエ様と、トモエMIアカデミー認定講師の三木佐知子様にお話を伺い、算数力だけでなく未来を生きる力を育む教育理念と、そろばんと英語の意外な親和性について詳しく探ります。

経歴慶應義塾大学 法学部卒業。国際基督教大学にて英語科教員免許取得。2001年、ハーバード大学のProject ZeroにてMultiple Intelligences Theoryを学ぶ。高等学校の教師、英会話学校の講師を経て、2004年よりトモエMIアカデミーを主宰。トモエ算盤株式会社 代表取締役社長には1985年に就任、現在に至る。

トモエMIアカデミー認定講師
伝統と革新が出会う!英語×そろばんの新時代

ー本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは『トモエMIアカデミー』について、どのような方を対象に、どういった指導を行っているのか教えていただけますか?
藤本トモエ所長(以下、敬称略):弊校は「英語でそろばんを教える」というコンセプトで運営しています。通常のそろばん教室とは少し異なり、級を取得することを目的とした塾ではありません。小学生や幼児のお子様を対象にしています。
幼児のお子様には、そろばんに入る前の準備として「百玉そろばん」という教材を使い、数の概念をしっかり理解できるよう指導しています。そろばんは抽象的な概念を含むため、小さなお子様には理解が難しい部分があります。そこで、個別指導に近い形で、1対1、もしくは講師1人に対して生徒2人までという少人数制で丁寧に教えています。
そろばんを始めたお子さまには、単に級を取るという目標ではなく、算数に直結する計算力や論理的思考力を育てることを重視しています。
弊校には公立小学校の生徒だけでなく、私立学校やインターナショナルスクールに通う生徒も多く通っています。
驚きの相乗効果!英語とそろばんで広がる子どもの可能性

ー英語とそろばんを同時に学ぶことで、どのような能力が育まれるのでしょうか?
三木 佐知子 トモエMIアカデミー認定講師(以下、敬称略):通常、そろばんでは「読み上げ算」という計算を日本語で行います。『トモエMIアカデミー』ではこれを英語で行っています。最近、高校1年生で英検1級に合格した元生徒が来校し、「英数字の聞き取りとそろばん計算によって英語を聞き取る耳が育った」と言っていました。
そろばんで計算するには集中しなければいけません。そろばんで育まれた集中力が英検1級の受験にも役立ったとも言われました。英語とそろばんを組み合わせることで、英語力と集中力の両方が育まれるのです。
ハードとソフトの融合 — そろばん製造会社が仕掛ける教育革命
ー藤本様が『トモエMIアカデミー』を立ち上げられた経緯やきっかけを教えてください。
藤本:私どもの経営母体は「トモエそろばん」というそろばん製造販売会社です。これからの時代は作って売るだけではなく、そのハードウェアをどう使うかというノウハウが重要になると考え、約20年前にこの教室を立ち上げました。
デジタル社会やIT時代においてもそろばんの有用性が評価されているのは、その使い方にあると思います。ハードウェアとその享受の仕方を一気通貫で提供したいというのが「トモエそろばん」の考え方です。
超個別指導と3桁区切りの魔法 — 他にはない独自メソッドの秘密

ー他のそろばん教室にはない特徴や、一番のアピールポイントを教えてください。
藤本:最大の特徴は「超個別指導」です。幼児クラスでは講師1名に対して生徒は最大2名まで、実質的にはほとんど1対1で指導しています。お子さんの個性や習熟度、性格に合わせたきめ細やかな指導ができるのが私たちの強みです。
小学生のクラスでも講師1名に対して生徒は3名までと少人数制を維持し、一人ひとりに丁寧な指導ができるようにしています。
また、英語とそろばんの組み合わせも大きな特徴です。そろばんと英語の数字は非常に相性が良いんです。例えば、大きな数字を表示する際、3桁ごとにカンマで区切りますが、そろばんも同様に3桁ごとに区切って数を置きます。英語で数を読む時も3桁ごとに単位が変わるので、とても理解しやすいのです。
実際、公立小学校の1年生や2年生でも、弊校の指導によって英語で13桁までの数を読めるようになりますし、聞き取ることもできるようになります。この英語とそろばんの親和性の高さを活かした指導が弊校の大きな特徴です。
競争より自信を — 生徒の内側から輝く力を引き出す指導哲学

ー生徒さんを指導する際に、特に意識していることや方針などがあれば教えてください。
三木:弊校のすべての指導において大切にしているのは、生徒の自己肯定感を育てることです。他者との競争ではなく、自己を確立して「自分はできる」という自信を持ってもらうことを重視しています。
これは単にそろばんができる、計算ができるということだけではありません。自己肯定感を育てることで、他の科目にも良い影響が出てきますので、そこを最も意識しています。
多元的知性が未来を拓く — ハーバード発「MI理論」の実践現場

ー塾のお名前にも入っている「MI理論」について、簡単に説明していただけますか?
藤本:MIとは「マルティプル・インテリジェンス」の略です。これはハーバード大学のガードナー教授が約40年前に提唱した考え方です。
学校教育では通常、読み書きの能力(国語的能力)と計算能力(数学的能力)の2つが重視されます。しかし実際には、知性はもっと多様なものです。例えば、運動能力、音楽的な能力、自然に関する知識、対人関係能力、自己に対する洞察力なども立派な知性の一部です。「マルティプル」はつまり、知性には様々な形があるという考え方です。
学校の勉強だけでなく、他の知性を見つけ、引き出してあげることも私たちの使命です。親御さんも含めて、「こんな良いところがあるじゃないですか」と気づかせてあげることを大切にしています。
ステップアップで安心 — 3つのコースで叶える段階的成長

ー提供しているコースやプランについて教えてくださいますか?
三木:弊校には3つのコースがあります。
まず「MIベーシッククラス」は主に幼児を対象としたクラスです。3歳以上で、1人で50分から1時間程度、親から離れてレッスンに集中できるお子様が対象です。このクラスでは「百玉そろばん」を使って、そろばんに入る前の段階として、100までの数の概念を楽しく遊びながら学びます。
次に「MIスタンダードクラス」があります。こちらではそろばんの基本を練習します。1時間ずっとそろばんをするわけではなく、英語の読み上げ算や聞き取りを行ったり、学年に応じて九九を覚えたりするなど、算数に関わる内容を総合的に学びます。
さらに上級レベルとして「MIアドバンストクラス」があります。このクラスでは全て英語で授業を行います。スタンダードクラスとアドバンストクラスのどちらに入るかは、入会時に相談して決定します。英語があまり話せない状態でアドバンストクラスに入るのは難しいので、体験授業を受けて最適なクラスを選びます。
デジタル時代の新展開 — オンラインと大人向けプログラムへの挑戦
ー今後強化していきたい点や、新たに取り組みたいことがあれば教えてください。
藤本:現在の『トモエMIアカデミー』取り組みを多くの方に知っていただき、より多くの生徒さんに来ていただくことが一つの目標です。
また、オンラインコースも開発予定です。ただし、子どもたちの場合はオンラインだけでの指導は難しいと考えていますので、主に大人向けのコースになります。「数が苦手」「算数が弱かった」という方に、そろばんの知識と数の工夫で簡単に計算ができるようになる12回コースを計画しています。
ー大人からそろばんを始めても遅くないのでしょうか?
三木:まったく遅くありません。実際に50歳以上の方から「そろばんを始めたい」というお問い合わせもよくありますし、高齢者向けのそろばん指導も実践しています。
そろばんは指先を動かし、数字を読み取ったり聞いたりして脳に伝達し、またそれを指に伝えるという過程があります。これは間違いなく脳の活性化に効果があることが脳科学者からも指摘されています。
多くのそろばん教室でも「脳に良い」ということをアピールしていますが、実際に高齢者施設のデイサービスでもアクティビティとして取り入れられています。私たちは高齢者へのそろばん指導法について、施設の先生方に教える講習も行っており、大人の方にもそろばんがどのように有効活用できるかを広める努力をしています。
数字への親しみが算数力を高める

ー最後に、『トモエMIアカデミー』への入会を考えている方々へ、メッセージをお願いします!
藤本:デジタル社会が加速する中でも、そろばんという伝統的な教具には代替不可能な価値があります。単なる計算スキルの向上ではなく、集中力、忍耐力、そして何より自分を信じる力を育む場として、これからも教室を進化させていきます。
幼少期から英語と数字に親しむ環境は、子どもたちの脳に特別な回路を形成し、将来のグローバル社会で活躍するための基盤となります。私たちはその土台づくりを大切にしています。
三木:「マルティプル・インテリジェンス」という考え方は、教育の価値観を変えるものです。IQや学校の成績だけでは測れない、子ども一人ひとりの多彩な才能を見つけ、磨き上げていく — それが私たちの使命です。
そろばんと英語の組み合わせは、算数の力と英語耳を同時に育む絶好の機会です。指先の繊細な動きから生まれる計算の喜びと、英語の音の響きを体感する感動を通じて、一緒に「できる自分」を発見していきましょう!