うごキッズ高崎教室が目指す、すべての子どもが笑顔になれる場所
群馬県高崎市にある「うごキッズ高崎教室」は、運動が苦手な子や、発達に特性のある子どもたちも安心して通える運動教室です。
「怒られない」「競争しない」を大切に、一人ひとりのペースに寄り添いながら、子どもたちの自己肯定感を育てています。
今回は、教室を立ち上げたNPO法人ソーシャルグッドの吉田大祐・恵美子夫妻に、開校の背景や指導への思い、そして教室での日々の関わりについて、じっくりお話を伺いました。
運動が得意じゃない子にこそ、楽しい運動体験を

私自身がこの教室を始めたきっかけは、「運動が苦手な子どもたちが、のびのびと身体を動かせる場所が少ない」と感じたからです。
世の中には、運動が得意な子のための教室や、競技に特化したクラブチームはたくさんあります。
でも、運動がちょっと苦手だったり、集団での活動に不安を感じたりする子どもたちが、「やってみたい」「ちょっと好きかもここならできるかも」と思えるような場は、なかなかありません。
そういった子どもたちは、学校や園でも、運動の時間にうまくなじめなかったり、失敗体験ばかりが積み重なってしまいがちです。私達はそんな現状を変えたくて、「安心して運動にチャレンジできる場所をつくろう」と思いました。
また、以前から発達障害のあるお子さんの施設に関わる中で、運動を通して子どもが変わっていく瞬間を何度も目にしてきました。
表情が豊かになったり、会話が増えたり、できることが少しずつ増えていったり……。その変化は、本人だけでなくご家族にとっても大きな希望になります。
だからこそ、「できない」ことに注目するのではなく、「できた!楽しい!もっとやってみたい!」という気持ちを引き出す教室をつくりたいと思ったのです。
一人ひとりに合わせた、その日だけのプログラム

うごキッズ高崎教室では、事前に決められたカリキュラムはありません。来てくれた子どもたちのその日の様子を見ながら、毎回プログラムを組み立てていきます。
たとえば、走るのが好きな子がいれば、たっぷり走れるような時間をとる。ボールに興味がある子がいれば、ボールを使ったゲームや的当てなど、遊びの中で自然と体が動くような工夫を取り入れます。
運動を「させる」教室ではなく、「やりたくなる」教室を目指しています。だからこそ、まずはその子のことをよく知ることから始めます。どんな性格で、何に興味があるのか。
お母さんやお父さんとどんな会話をしているのか。好きな色やキャラクターは?――そんなふうに、日常の延長線上で自然と運動を楽しめるような場をつくるよう心がけています。
プログラムのベースには、「コーディネーショントレーニング」という考え方を取り入れています。これは、主に視覚、聴覚、触覚、バランス感覚、空間感覚を元に、思った通りに体を動かせるようになるために、体の各部位を協調的に動かすトレーニングです。
走る・跳ぶ・投げるといった基本的な動作を組み合わせ、子どもたちの「動ける土台」をたくさんの経験を通してつくっていくのです。
「できた!」「たのしい!」を引き出す関わり方

私たちが一番大切にしているのは、「できた!」「たのしい!」を引き出すことです。
子どもは「やらされる」と感じた瞬間に、心を閉じてしまいます。だからこそ、「もっとやってみたい」「あれもやってみたい」と思えるような関わり方を心がけています。
私達は、子どもたちと接する時、動きだけを見ているわけではありません。何を話しているか、どんな表情をしているか、どんな服を着てきたか、保護者の方とのやり取りはどうか――すべての情報から、子どもたちの今の状態や気持ちを理解しようとしています。
教室の中だけでなく、受付や待ち時間の間にも、保護者の方と話をしながら情報を共有し、次回のプログラムに反映させています。
今日この子はどんなことがあったのか、どんな気持ちでここに来たのか。そういった「見えない部分」まで大切にすることで、より深いサポートができると考えています。
小さな変化が、何よりのやりがい

印象に残っているエピソードは数えきれませんが、中でも心に残っているのは、最初は全く会話ができなかったお子さんが、通っていくうちに少しずつ言葉が増え、笑顔を見せてくれるようになったことです。
週1回・60分という限られた時間の中でも、「ここが楽しい」「また行きたい」と感じてもらえることが、次への成長につながっているのだと思います。
ある時は、運動が大の苦手で、最初に来た時には「やりたくない」と泣いていたお子さんが、今では家族の他の用事をキャンセルしてでも来たがるようになった――そんな変化を見ると、この教室の意味を改めて感じます。
また、保護者の方から「体育が好きになって普段から動くようになった」「運動会のかけっこで一番になった」といった声をいただくことも多く、家庭での会話や親子の関係性にも良い影響を与えているように感じます。
運動の力をもっと広く届けたい

今後は、教室に来られる子どもだけでなく、もっと多くの子どもたちと関わっていきたいと考えています。
現在は、高崎市を拠点にしながら、放課後等デイサービスや福祉施設、公民館、学校などに出張する形でも活動を広げています。
私が現地に行き、子どもたちのいる場所で直接関わることで、「運動って楽しい」「またやってみたい」という体験を一人でも多くの子に届けたいと思っています。
また、私と同じように、子どもたちの「できた!たのしい!もっと!」を引き出せる指導者を増やしたいという想いから、「うごキッズトレーナー養成スクール」というオンラインスクールも立ち上げました。
最終的には、全国に300人の仲間を育て、「運動の力」で子どもたちの可能性を広げていけたらと考えています。
最後に、この記事を読んでくださった方へ

お子さんの運動のことで悩んでいる保護者の方がいらっしゃったら、まずは一度、教室をのぞきに来てください。
「うちの子、運動が苦手で」「体を動かすのが下手で…」――そんな声を多く聞いてきましたが、実際には、初めての参加でも帰る頃にはたくさんの「できた!」を体験して笑顔になっているお子さんがたくさんいます。
運動が嫌いでも、苦手でも大丈夫です。むしろ、そういう子どもたちの「はじめの一歩」を支えられる教室でありたいと思っています。
そして、私たちの活動に共感し、「こんな教室を自分の地域でもやってみたい」と思ってくださる方がいたら、ぜひ一緒にこの輪を広げていきましょう。運動は、子どもたちの未来を拓く、素晴らしいツールです。