「居場所がない」から「ありのままでいい」へ – NPO法人若者支援ひろば三愛が紡ぐ希望の物語

学校でも家庭でもない、もうひとつの居場所。そこには、「ありのままのあなたでいい」というメッセージが溢れています。NPO法人若者支援ひろば三愛は、不登校やギフテッドなど、従来の教育システムになじめない子どもたちに、新たな可能性を見出す場「Uncut Gems熊谷」を提供しています。

設立者の林氏が語る、この活動に込められた思いとは? 子どもたちの驚くべき変化とは? そして、これからの展望とは?

本インタビューでは、すべての子どもたちが自分らしく生きられる社会を目指す、若者支援ひろば三愛の挑戦に迫ります。不登校やお子様の将来に悩む保護者の方、居場所を探している若者たちに、新たな希望の光を投げかける内容となっています。

対象者と指導内容

ーまず簡単にどういった方を対象にしている団体なのかあるいは、どういった指導を行っているスクールなのか、ついてお聞かせ頂けますでしょうか?

林:NPO法人若者支援ひろば三愛が運営する「Uncut Gems熊谷」は、主に中学生以上から20代前半までの、学校や自宅に居場所のない子どもたちを対象とした居場所です。最近では「サードプレイス」や「第3の居場所」と呼ばれるような場所を提供しています。

具体的な活動内容としては、不登校気味のお子さんには、まず場所や人に慣れることから始めます。ボランティアや他の子どもたちと一緒に過ごす中で、徐々に勉強への興味を引き出していきます。高校生の中には、学校に通いながら利用する子もおり、大学生ボランティアによる学習支援も行っています。

施設内は勉強スペースと自由に過ごせるスペースに分かれており、子どもたちは自分のペースで自由に過ごすことができます。勉強している子もいれば、ゲームをしている子もいたり、寝ている子もいたりといった場です。

現在は中学生が3〜5人、高校生が4〜5人程度利用しています。

活動のきっかけと経緯

ーなぜ林さんはこの活動を始めようと思ったのでしょうか?この活動を始めた経緯やきっかけについてお聞かせ頂けますでしょうか?

林:この活動を始めたきっかけは、教会で不登校の子や貧困家庭の子どもたちと関わった経験にさかのぼります。その中で、彼らに何かしてあげたいという思いが芽生えました。その後、大学の学生相談室での経験や、中学校での相談勤務経験を通じて、子どもたちとの関わりにさらに興味を持つようになった次第です。

当初は18歳くらいの子を対象に考えていましたが、様々な経験を通じて徐々に対象年齢を下げていきました。特に、家庭環境が厳しい子どもたちや母子家庭の子どもたちと過ごす中で、彼らの変化を目の当たりにし、支援の必要性を強く感じるようになったのです。

また、大学院で心理士の資格を取得する際の実習先が児童養護施設だったことも、この活動を始める大きなきっかけとなりました。そこでの経験から、子どもたちの居場所づくりの重要性を実感し、この団体の設立に至ったというのが経緯です。

解決したい世の中の課題

ーご自身の中でこの団体での活動を通して解決したい世の中の課題についてお伺いさせてください。

林:私たちが解決したいと考えている課題の一つは、不登校や引きこもりの問題です。特に最近は小学校低学年の不登校が増えており、これは大きな懸念事項です。小学校低学年で完全に不登校になってしまうと、基礎学力を身につける機会を失ってしまい、将来の選択肢が狭まってしまう可能性があります。

また、ギフテッド児童、特に2E(Twice-Exceptional)と呼ばれる高い知的能力と発達障害の特性を併せ持つ子どもたちへの支援も重要だと考えています。彼らは学校でも居場所を見つけづらいことが多く、自信を失わないような場所を提供することが必要です。

さらに、子どもたちの居場所不足という問題にも取り組んでいます。学校や家庭以外の「第3の居場所」を提供することで、子どもたちが安心して自分らしさを発揮できる環境を作り出したいと考えています。

これらの課題に取り組むことで、すべての子どもたちが自分の可能性を最大限に発揮できる社会を目指しています。

お子様との接し方・意識しているポイント

団体の活動をしていくなかで、お子様を支援する際に意識していることがあれば教えて下さい

林:子どもたちを支援する際に最も意識しているのは、「ありのままでいい」という メッセージを伝えることです。ここでは何をしても否定されることはなく、肯定的な環境の中で過ごせるようにしています。

また一人ひとりの個性や状況に合わせた対応も心がけています。不登校気味の子には無理に勉強を押し付けるのではなく、まずは居場所に慣れることから始め、徐々に学習への興味を引き出すようにしています。

さらに、子どもたちの自主性を重視している点も私達の特徴です。自分で進む方向を見つけ、頑張ろうという決心が出てくるまで待ち、その後は全力でサポートするようにしています。

加えて、ボランティアや他の子どもたちとの関わりを通じて、社会性を育む機会を提供することも意識しています。同じような境遇の仲間と出会い、互いに支え合う関係性を築くことで、心の成長を促しています。

最後に、適切な距離感を保つことも重要視しています。特に思春期の子どもたちを対象としているため、ボランティアスタッフには個人的な連絡先の交換を禁止するなど、一定のルールを設けています。

今後の取り組みについて

ー今後、こういった点をより強化していきたいあるいは、取り組んでいきたいことがあればお聞かせ願います。

林:今後、より強化していきたい点がいくつかあります。まず、1つ目は小学生への支援拡大です。特に低学年の不登校が増えている現状を踏まえ、早期からの支援が必要だと感じています。来年度から少しずつ実現できないか模索しているところです。

次に、ギフテッド児童や2E(Twice-Exceptional)の子どもたちへの支援にも力を入れたいと考えています。彼らの特性を理解し、適切なサポートができる環境を整えていきたいと思います。

また、大学生ボランティアの継続的な参加を促進することも課題です。卒業後いなくなる問題があるため、継続的な参加を求めるために大学のボランティアセンターとの連携協力が必要と感じています。

学校との連携強化も重要な取り組みの一つです。子どもたちをこちらに囲い込むのではなく、学校とうまく連携を取りながら支援していくことで、より効果的な支援ができると考えています。

最後に、同じような思いを持つ他の団体や個人とのネットワークづくりにも力を入れていきたいと思います。情報交換や協力関係を築くことで、より広範囲で効果的な支援ができるのではないかと考えています。

お子様と保護者の方へのメッセージ

ー最後に団体へのご相談などを検討しているお子様へのメッセージをお願いいたします。(および保護者の方)にメッセージをお願いいたします

林:まずはお子様へ。居場所がないと感じたり、学校に行くのが辛いと感じたりしている皆さん。あなたはそのままのあなたでいいんです。ここは、あなたの「ありのまま」を受け入れる場所です。最初の一歩を踏み出すのは勇気がいるかもしれません。でも、一度来てみてください。きっと、あなたの居場所が見つかるはずです。

一人で来るのが不安な場合は、親御さんやお友達と一緒でも構いません。電話が苦手な方は、インスタグラムのダイレクトメッセージでも連絡を受け付けています。どんな小さなことでも、まずは声をかけてみてください。

保護者の方へ。お子様の様子に不安を感じていらっしゃるかもしれません。私たちは、お子様の個性や状況に合わせた支援を心がけています。ここでの活動を通じて、多くの子どもたちが少しずつ変化し、成長していく姿を見てきました。一緒にお子様の成長を見守り、サポートしていけたらと思います。

どうぞ、お気軽にご連絡ください。お子様と保護者の方、両方のお話をじっくりと伺い、最適な支援方法を一緒に考えていきたいと思います。皆様のご連絡を心よりお待ちしております。