2017年のサービス開始以来、7年にわたって子どもたちのプログラミング教育を支援してきたソニー・グローバルエデュケーションの「KOOV(クーブ)」。カラフルなブロックと電子パーツを組み合わせてロボットを作り、専用アプリでプログラミングを学ぶことができる教材として、教育現場から高い評価を得ています。
小学校でのプログラミング教育必修化を見据えて開発された「KOOV」は、遊びながら学べる独自の学習環境を提供。5歳から12歳を中心に、幅広い年齢層に向けて展開されています。
今回は「KOOV」の開発に携わる倉橋氏に、サービスの特徴や今後の展望について詳しくお話を伺いました。
ソニー・グローバルエデュケーションが手がけるプログラミング教材「KOOV」とは
ーまずKOOVの概要について教えていただけますでしょうか?
倉橋:KOOVは、主に小学生を対象としたプログラミング学習キットです。5歳から12歳前後の子どもたちをメインターゲットとしていますが、実際には中学校や幼児の教育現場でも活用されています。
KOOVはKOOV公式サイトやAmazonで販売しており、一般消費者向けだけでなく、塾や学校などの教育機関にも提供しています。
小学校プログラミング教育必修化を見据えたKOOVの誕生
ーKOOVがローンチされた背景について教えていただけますでしょうか?
倉橋:予測が難しく急速に変化する時代を生き抜くために、子どもたちにどのような教育を提供すれば良いかを考えていました。その中で、私たちは自発的に学び、テクノロジーと共生できる力が必要だと感じたのです。企画当時、世界的に注目されていたプログラミング教育に着目し、子どもたちの創造力と探究心を育むサービスを構想しました。
また、ソニーグループの存在意義である「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」という理念も、KOOVが目指す世界観と大きく関わっています。
ソニーはこれまでも映像、音楽、ゲームなどの分野において、クリエイティビティとテクノロジーをクリエイターの取り組みと組み合わせて感動体験を提供してきました。教育分野においても、未来を担う子どもたちのクリエイティビティを養い、テクノロジーを使いこなす力を身につけてほしいという思いがありました。その想いが、KOOVという形で実現したのです。
特徴的な3つのキットと充実の学習コンテンツ
ー具体的にどのような製品やコンテンツを提供されているのでしょうか?
倉橋:KOOVの主要なラインナップには、エントリーキット、ベーシックキット、アドバンスキットの3種類があります。キットには、カラフルなブロックと電子パーツが含まれており、これらを組み合わせてロボットを作ります。
KOOVは7色・7種類のブロックと電子パーツで構成されており、上下左右どの方向からでも組み立てられる設計になっています。また、クリアな質感と半透明なデザインは、性別を問わず多くの子どもたちに好評です。
アプリケーションは、Windows、Chromebook、Mac、iPadに対応しています。アプリ内には充実した学習コンテンツが用意されており、3Dの組み立てガイドで分かりやすくロボットの組み立てをサポートします。
段階的に学べるプログラミング教育
ープログラミングの学習はどのように進められるのでしょうか?
倉橋:プログラミングの学習は段階的に進められるよう設計されています。例えば、「はじめてのロボットプログラミング」というコースでは、最初にLEDの点滅といった基本的なプログラムから始まり、徐々に条件分岐や関数、変数の概念を学んでいきます。
プログラミング環境は、Scratchに似たビジュアルプログラミング方式を採用しています。プログラムを文字で記述するのではなく、ブロックを組み立てるようにして作成しますが、プログラミングの基本的な考え方を学ぶことが可能です。
まずはロボットを動かしてプログラミングでどんなことができるかを遊びながら体験してもらうことを想定して、「ロボットレシピ」という、あらかじめプログラムが組まれたコンテンツも用意しています。
これらのコンテンツは無料で提供しており、約30種類の作例が揃っています。
幅広い年齢層での活用事例
ーKOOVはどのような方々に活用されているのでしょうか?
倉橋:KOOVは主に小学生のお子さまをもつご家庭や小学校、学習塾、プログラミング教室などで活用されています。小学生のほかにも、幼稚園や幼児教室から中学校まで幅広くご利用いただいています。
さらには大人の方々にも活用いただいた事例もあります。例えば、製造業の新人研修で、製品の企画から設計、開発、テストまでのプロセスを実際に体験しながら学ぶための教材として使用されたりしています。
また、年に1回開催している「KOOV Challenge」というコンテストでは、中学生以上が参加できる「オープン区分」を設けています。保護者の方や塾の先生方からも優れた作品の応募があり、例えば「宇宙ごみを拾うロボット」や「表裏がひっくりかえっても動作する6足歩行ロボット」など大人ならではの発想力と技術力を活かした作品が寄せられています。
今後の展開とビジョン
ー今後の展開についてお聞かせください。
倉橋:現在は、子どもたちが継続して学び続けられる仕組みの拡充に力を入れています。現在もこうした取り組みの一つとして、「クエスト」機能を提供しています。 KOOVアプリ内で「作品を3つ登録する」「コンテストにエントリーする」などのミッションをクリアすると、報酬としてアプリ内で使えるアバターの装飾アイテムがもらえるようになっています。
また2024年5月には、学習コンテンツ配信サービス「KOOVプラス」をローンチしました。月額1,500円から2,500円のプランで、3種類の学習コンテンツを提供しています。
身の回りの素材を活用した工作とプログラミングを組み合わせて、自分だけの遊びをつくる「CREATE by KOOV 」や、実物のキットがなくてもゲーム感覚でプログラミングを学習できる「VIRTUAL KOOV」、ホームポジションが習得できるタイピング練習ソフト「タイピングレース」などを提供しています。
プログラミングを通じた創造力の育成を目指して
ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
倉橋:私自身、技術者としてのキャリアは中学生の時に始めたプログラミングがきっかけでした。始めた直後は右も左もわからなかったですが、Webサイトやゲームなど好きなものを作っていくうちに楽しくなり、考え方や知識も身についてきました。
プログラミングがどんなものかよくわからない、という方にも、まずは遊び感覚で体験してみていただきたいと考えています。
また、プログラミングはあくまでも手段であり、大切なのは「何かを作る」という体験です。KOOVを通じて、誰かのため、あるいは自分のために目的を持ってものづくりをしてみる。
そこで得られる自信は、将来プログラミングに関する仕事に就かなくても、必ず役に立つと信じています。少しでも興味のある方は、ぜひ手に取っていただければ幸いです。