大学入試の形態が大きく変化している昨今、一般入試以外の入試方式、いわゆる「年内入試」の重要性が増しています。総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試など、様々な形態で実施されるこれらの入試では、評定平均値や英語資格など、大学・学部ごとに異なる出願条件が設定されています。しかし、その情報収集と整理は、受験生や保護者、そして進路指導担当者にとって大きな負担となっているのが現状です。
そんな課題に着目し、年内入試に特化したナビサイトを立ち上げたのがAvalon Consulting株式会社の竹内健登氏です。総合型選抜の塾運営の経験を活かし、膨大な入試情報を整理・体系化することで、効率的な進路指導を実現しています。今回は、このサービスの特徴や今後の展望について、詳しくお話を伺いました。
『年内入試ナビ』の概要
ー本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは、『年内入試ナビ』の概要について教えてください。
竹内 健登(たけうち けんと)代表取締役社長:年内入試ナビは、総合型選抜や公募推薦、スポーツ推薦、帰国子女入試など、いわゆる年内入試で大学合格を目指している方向けのナビゲーションサイトです。2024年の4月にリリースしたばかりの比較的新しいサービスになります。
従来、年内入試に特化したナビサイトが存在していなかったため、受験生や保護者、進路指導担当者の方々が情報収集に苦労されていました。そこで、総合型選抜の塾を運営してきた経験と知見を活かし、このプラットフォームを立ち上げることにしました。
サイトでは、受験生や保護者の方は無料で各種検索機能や合格力診断を利用することができます。一方で、大学側からは入試広報費としてご予算をいただき、運営を行っています。駅前の看板広告などと比べて、直接受験生とコミュニケーションが取れる点で、より効果的な広報活動が可能になると考えています。
ーサービス開始からまだ半年ほどとのことですが、どのような反響がありますか?
竹内:現在、123の大学が掲載されており、主要な大学についてはほぼカバーできている状況です。また、大学側からも直接受験生とコンタクトが取れる貴重なプラットフォームとして、高い評価をいただいています。今後は、より多くの大学の情報を追加していくとともに、入試対策情報なども充実させていく予定です。
まだまだ新しいサービスですが、すでに多くの方々にご利用いただいています。
年内入試の比重が高まる現代の受験事情
ー現在の大学入試の状況について教えてください。
竹内:大学入試の形態が大きく変化してきています。平成12年と比較すると、一般入試で大学に入学する割合は半分以下になっています。代わりに増加しているのが総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試です。
指定校推薦以外にも公募推薦や特別推薦など様々な形態があり、これらの入試で入学する学生が増加傾向にあります。これらの入試は主に11月や12月に実施されるため「年内入試」と呼ばれ、早期に進路が決定するケースが増えています。一般入試の勉強だけしていた受験生も、これらの入試にも対応せざるを得ない状況になってきているのです。
複雑化する出願条件と情報収集の課題
ー出願に関して具体的にどのような課題があるのでしょうか?
竹内:各大学によって出願条件が大きく異なります。
同じ大学でも学部によって条件が異なったり、同じ学部でも複数の出願パターンがあったりします。例えば法学部でもFIT入試A方式・B方式、帰国子女向け、IBコース向けなど、非常に細かく分かれています。
つまり、各大学の募集要項を個別に確認する必要があり、膨大な時間と労力がかかっています。大学のウェブサイトで募集要項を確認しようとすると、長大な文章を読み解く必要があり、出願資格や試験日程、提出書類など、必要な情報を探すのも一苦労の状況です。
サービス開発の経緯とユニークな特徴
ー年内入試ナビを立ち上げられた理由を教えてください。
竹内:もともと総合型選抜の塾「ホワイトアカデミー」を運営しており、進路指導をする中で情報提供の限界を感じていました。個人の力では全ての募集要項を把握し、適切に案内することが難しい。そこで、ナビサイトとしてプログラム化すれば、より多くの情報を網羅的に提供できると考えたのです。
特に、年内入試に特化したナビサイトが存在していなかったことも大きな理由です。受験生も保護者も、そして学校の進路指導担当者も困っている。さらには、大学側も年内入試をもっと多くの学生に受けてほしいと考えているにもかかわらず、正しい情報が行き渡っていないという状況でした。そのような現状をなんとか改善していきたいという思いも、強くありましたね。
革新的な3つの主要機能
ー他のサービスにはない特徴について教えてください。
竹内:当サービスには他にない特徴が3つあります。
- 条件検索機能:自分の持っている出願条件を入力すると、受験可能な入試が表示されます。評定平均値や英語の資格スコアなどの基準に加え、学問分野やエリアでの絞り込みも可能です。従来なら各大学のウェブサイトを個別に確認する必要があり、1時間以上かかっていた作業が、わずか10秒で完了できます。
- 合格力診断:評定や実績、課外活動などを入力すると、どのレベルの大学が狙えるかを診断できます。皆勤賞や生徒会活動、留学経験なども評価の対象となります。また、活動を追加した場合の合格可能性の変化も確認できるため、今後の活動計画にも活用できます。
- スカウト機能:大学側から直接スカウトが来る仕組みを導入しています。これまでスポーツ推薦では、大会会場で監督が直接声をかけるようなスカウト活動が行われていましたが、それをオンライン上で実現しました。大学側は評定や実績などを見て興味のある生徒にアプローチでき、オープンキャンパスや特別セミナーへの案内なども可能です。
サービスの利用者層と活用方法
ー具体的にどのような方々に使っていただきたいサービスなのでしょうか?
竹内:主な利用者は、総合型選抜や公募推薦などの年内入試で大学進学を目指す方々です。
実際には、生徒本人だけでなく、保護者の方々にも多く利用していただいています。サイトには学費などの検索条件も用意されており、保護者の視点でも使いやすい設計になっています。
また、高校の進路指導担当の先生方にとっても、効率的な進路指導のツールとして活用いただけます。個人の経験や知識に依存しがちだった進路指導を、データベースに基づいて行えるようになります。
今後の展望と発展性
ー今後の展開についてお聞かせください。
竹内:主に3つの方向性で発展を考えています。
1つ目は掲載大学数の拡大です。現在123校の情報を掲載していますが、日本の大学は約760校あります。主要な大学はほぼカバーできていますが、地方の有力大学なども順次追加していく予定です。地元では重要な進路選択肢となる大学も掲載していきたいと考えています。
2つ目は入試対策情報の充実です。私たちのノウハウを活かした記事コンテンツを増やしていく予定です。東大の総合型選抜や公募推薦の対策など、専門的な情報を分かりやすく提供していきます。
3つ目は合格体験記などのユーザーフィードバック情報の拡充です。出願書類の書き方のコツや面接での質問例など、実際の体験に基づく情報を充実させていきます。
そして、将来的には、オープンキャンパスのレーティング機能なども実装したいと考えています。オープンキャンパスの評価を5段階で行い、高評価のプログラムをランキング形式で紹介する予定です。これにより、偏差値だけでなく、実際の教育内容や施設の充実度なども評価軸として提供できるようになります。
無名でも素晴らしい教育を行っている大学は多くありますが、知名度の低さからオープンキャンパスへの集客に苦労しているケースも少なくありません。レーティング機能により、そういった大学の魅力を可視化し、より多くの受験生に知ってもらう機会を作りたいと考えています。
利用者へのメッセージ
ー最後に、このサービスを使って欲しい方へメッセージをお願いします!
竹内:『年内入試ナビ』の理念は「偏差値ではなく学問への興味が入試の結果に繋がる時代を作る」ことです。総合型選抜や公募推薦は、自分の学びたい学問への熱意や、それに関連する高校時代の活動をアピールする入試です。しっかりとしたアピールができれば合格できる、そういった新しい評価軸での選抜方法なのです。
当サイトは、勉強が苦手で一般入試に不安のある方の支援ももちろん行っていきますが、それ以上に「自分の好きな学問を突き詰めていけば道が開ける」というメッセージを伝えていきたいと考えています。そのためのルート作りを我々が担っていきますので、ぜひ活用していただければと思います。
時代とともに変化する入試制度の中で、受験生一人一人が自分に合った進路を見つけられるよう、今後もサービスの拡充を続けていきます。